謎の天才絵師とも呼ばれる土佐の絵師・金蔵は、幕末から明治初期にかけて数多くの芝居絵屏風などを残し、「絵金さん」の愛称で、地元高知で長年親しまれてきました。同時代のどの絵師とも異なる画風で描かれた屏風絵は、今も変わらず夏祭りの数日間、高知各所の神社等で飾られ、闇の中に蝋燭の灯りで浮かび上がるおどろおどろしい芝居の場面は、見るものに鮮烈な印象を残しています。

1966年に雑誌『太陽』で特集されて以来、東京、関西で展覧会が開催され、映画、舞台、小説といった様々なジャンルで取り上げられるなど、1970年前後には一大ブームとなりましたが、絵金の大規模な展覧会はこの半世紀ほど高知県外では開催されてきませんでした。

今回は、幕末の土佐に生き、異彩を放つ屏風絵・絵馬提灯などを残した「絵金」の類稀なる個性と、その魅力について、代表作の数々で紹介します。