川口市内を流れる芝川と荒川が交差する南平地区は、かつて麦畑が広がり、良質な水資源と水運に恵まれていました。最盛期には10軒もの味噌工場が軒を連ねており、その中でも有力な存在であった田中家が1912年に建てたのが旧田中家住宅です。

 代々の当主によって大切に守り受け継がれ、今年で101年になるこの瀟洒な住宅は、当時としては珍しい3 階建ての煉瓦造りの豪勢なたたずまいが目を引きます。またロココや新古典主義の華やかな家具、銘木を惜しみなく使用した座敷など、川口の商家の趣や贅の数々を今に伝えています。

 また、1973 年に建てられた茶室は、市内では多くの客人をもてなすことのできる希少な空間として、川口の茶文化を育んできました。本展では、旧田中家住宅の建築や華やかな意匠の特徴と、地域ゆかりの茶道具などを紹介し、近代産業の遺構と共に残る多彩な文化をご堪能ください。