中国で成立し、日本で発展した全集は、言葉による論理的な説明ではなく、座禅や禅問答によって心を通じて教えを伝えることを目指しました。このような禅宗の教えは芸術制作にも大きな影響を与え、禅僧が自身の到達した心の境涯を墨蹟や絵画を通して表現することで独自の美術を生み出してきました。
 当館所蔵の重要文化財 虎関師錬筆「墨蹟 法語」には、中洞禅人に与えた法の教えが説かれ、気迫にあふれる書風は虎関師錬の禅の心が反映されています。本作品は令和4~5年度に保存修理を実施し、このたび修理完成後初めての公開となります。
 本展は、虎関師錬筆「墨蹟 法語」とともに、当館が所蔵する墨蹟・頂相・道釋人物画や、禅僧にまつわる水墨画のほか、特別出陳品を一堂に展示します。本展を通して、禅宗の歴史や精神に触れていただきながら、中世に花開いた禅宗文化の多様な美術品をご覧いただきます。