イングリッド・ロンニングダルの作品は、絵画、織物、彫刻など多様な素材を駆使し、私たちが住む空間への理解を深めることを目的としています。建築を出発点とし、彼女のプロセスは観察、スケッチ、写真撮影から始まります。
シリーズ「エッジズ」の作品は、彼女が20世紀初頭のベルリンの公共団地や、ドイツの建築家ブルーノ・タウト(1880-1938)から受けた印象を作品にしており、麻布に描かれた色の平面は、ガルテンシュタット・ファルケンベルク、フーファイゼンジートルング・ブリッツ、ヴァルトジードルング・ツェーレンドルフなど、特定の団地を示しています。
ペルニーレ・ディブヴィクはこう説明しています。「タウトは第一次世界大戦後に発展した機能的で美的かつ効率的な住宅を目指す建築運動、新建築(ノイエス・バウエン)と深く関わっていました。直線、四角形、明るい色彩、そして白い大きな面が、建物の主要な構成要素であり、これらはロンニングダルが観察する特徴です。イングリッド・ロンニングダルの作品は絵画でも彫刻でもタペストリーでもありません。むしろ、それらの分類の境界線にまたがり、視覚的、物理的、触覚的なバランスを保ちながら、曖昧な領域で機能しています。」
今日、タウトは日本の伝統建築の美を世界に伝えたことで最もよく知られています。ブルーノ・タウトは第二次世界大戦前に日本に移住し、最初は京都に、後に高崎の仏教寺院に住み、地元の職人と協力して、地元の素材や技術をモダニズムと融合させた多くの作品をデザインしました。彼は日本滞在中に数件の建築の仕事をこなしましたが、それが彼自身の「建築休暇」と呼ぶ時間を開くきっかけとなりました。この期間に、彼は日本文化とモダニズム建築の関係に焦点を当てたいくつかのテキストや書籍を執筆しました。最後の著作『建築論(Architekturlehre)』の構想と執筆も、日本で始まりました。タウトの日本のミニマリスト美学に関する著作は、ル・コルビュジエやワルター・グロピウスといった建築家にも影響を与えていることは言うまでもありません。
イングリッド・ロンニングダルは、彼女の独特な視点で、タウトの建築の世界を布地と色彩を使って表現しています。
また、ロニングダルは環境アートにも取り組んでいます。彼女は、ノルウェー、スタヴァンゲル大学病院内での5年にわたる大規模な壁画と彫刻のプロジェクトを手掛け、2024年の夏に完成させました。このプロジェクトで彼女は、1,200平方メートルの壁面画と、建物内に設置された5つの大型コンクリート彫刻を大学病院内に制作しています。