明石海峡を眼下に望む淡路島北部で弥生時代に営まれた鉄器づくりのムラ、奈良時代の播磨国風土記に記された古代製鉄の記録、中世の刀剣などに刻まれた西播磨の「宍粟しそう」や「千草」の地名、そして江戸時代に営まれた“たたら製鉄”など、歴史をひもとくと、製鉄は兵庫県域と長く関わりを持ち続けてきたことがわかります。明治期に入ると欧米諸国から鋼材の大量輸入や鉄山の国有林化などにより、兵庫のたたら製鉄は他県とくらべて早い時期に終焉を迎えます。その一方で近代以降、臨海部の工業地帯では大規模な製鉄業が始まり、現在では温室効果ガスの排出を抑えるなど自然環境に配慮した鉄づくりへの挑戦が始まっています。

兵庫県立歴史博物館では、平成27年(2015)に設置されたひょうご歴史研究室を中心にして、「播磨のたたら製鉄」の特質の解明を進めてきました。この展覧会では、その研究成果を活かしながら、兵庫県域での鉄づくりのあゆみについて、さまざまな歴史資料により紹介します。