意味の媒体である新聞や書物を燃やし、灰にする仕事をしていた頃があったが、このところは、工業製品の鉄を腐食させ、自然界に遍在する酸化鉄に戻す仕事をしている。何ら進展もなく、同じことを繰り返しているにすぎない。いずれも、人間に飼い馴らされた物を、思い通りにならない他者としての物質に戻しているのである。時間には限りがあるというのに、存在に馴染めず、一方でこの社会に馴染んでしまうことを恐れて、徒労ばかりを積み重ねているのだ。今回、せめて九つの鉄の箱に内蔵された不明の空間から、死の気配が漂えばよいのだが。底が抜けてしまったこの社会で、死は創造の契機となることだろう。
memento mori 死を想え。