「建築アーカイブズをひらく」は、京都工芸繊維大学美術工芸資料館が収蔵する知られざる建築資料や収蔵に向けて整理 作業中の建築資料、あるいはその整理や研究の過程で得られた発見を紹介する小さな展覧会のシリーズです。収蔵庫の内外で人目につかずにいるさまざまな記録に光を当て、都市や建築に関わるさまざまな活動を読み解くことで、これからの都市や建築を考えるための新たな視点を提供するとともに、建築アーカイブズの可能性を発信します。
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 「私は街の診断師だ」(北沢恒彦『自分の町で生きるには』(晶文社、1981年))
北沢恒彦は京都市中小企業指導所の職員として1970年代から1990年代にかけて京都の商店街、小売市場、個店の商業診断調査を行い、まちのあり方を思案した人物です。その調査には「京都ベ平連」や「思想の科学」など北沢が所属した市民活動の仲間をはじめ、京都工芸繊維大学や京都精華大学などの学者、学生、写真家、デザイナーなどが参画しました。彼らは、大型店舗やスーパーに圧倒され失われつつあった京都の商いの場をそれぞれの視点で分析し、記録を行いました。
本展覧会では美術工芸資料館に寄贈された資料を通じて、北沢恒彦らがどのように「まち」を思考し、調査を実施したのかを読み解くと共に、ポスト経済成長期の京都の姿を、彼らの調査の記録である診断報告書、巡回レポート、写真、北沢と商人との手紙から描き出します。