HAGIWARA PROJECTSでは、2025年3月8日(土)より、早川祐太の個展「ブラックボール」を開催いたします。本展は、2016年以来約8年ぶりとなる個展です。
早川は、「人間はどのように世界に存在しているのか」という根源的な問いを探求しながら、重力や空気、水の表面張力といった物理的な「現象」を取り入れた彫刻やインスタレーションを制作してきました。
約10年前、作家自身の身体に大きな問題が生じましたが、それを契機に「自分が立つ」ということの意味や、ものの重さ、触れる感覚への意識がより鋭敏になりました。本展では、そうした身体感覚と彫刻との関係を改めて見つめ直しながら、世界の在り方に触れる作品を発表します。

(アーティストステートメント 2025より抜粋)
「彫刻を創る。そんなことを随分長いこと考え続けていたが、まさかそれを自分に使うとはね。治療と呼ばれるものを切り上げて、自分の世界への触れ方の再構築を始めた。世界に対してやっていたそれを自分にやるってこと。それはある “起こり” に立ち会うことであり、そいつらがあらぬ方向にいったり、どう変性しようがとにかく付き合ってみること。こちら側が変わることは構わない(この場合、どちらもこちら側)。主体なんて早々に消し去り、強すぎず弱すぎず扱うこと。やっとこさ組み上がった(ようにみえる)それは “なくなった”それに限りなく近い何かであり、“それ”と呼べないところにそれぞれ染み込んでいった。固定されていたようなさまざまなことがズリズリとスライドして抽象度を上げていき、“あること”と“ないこと”が等しく存在したような時、その摩擦はなくなり、もう一度世界に触れはじめたような気がした。今思えば、はじめからこちらもあちらもなかったのかもなぁと思う。あと、もはやこれは治療ではないので完治みたいなところもないのだ。
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ある日、水面に養生テープを貼ってみた。貼れた。はて、養生テープの下は水中なんだろうか。いや、水面のままだ。 貼れてるしね。突然現れたそいつに、あー僕はこういうものを作品と呼んできたなと思ったのでした。
無頓着に世界に触りたいのは、こういった社会なんて持ち込めない世界の一面がひょっこり現れる瞬間に立ち会うためなのです。」



作家略歴
1984年岐阜県生まれ。2010年 武蔵野美術⼤学⼤学院造形研究科美術専攻彫刻コース修了。主な個展に「Shape for shape」Art Center Ongoing (2020,東京)、「クリテリオム95 早川祐太」⽔⼾芸術館現代美術センター (2018, 茨城)、「i am you」BANANAJAM (2018, 深圳,中国)、「about body」HAGIWARA PROJECTS (2016, 東京)など。主なグループ展に「でんちゅうストラット−つなげる彫刻」平櫛⽥中彫刻美術館 (2021, 東京)、「Water/proof〜移動する境界〜」KOGANAI ART SPOT シャトー2F (2021, 東京)、「ユーモアてん。/ Sense of Humor」21_21 Design Sight (2019, 東京)、「早川祐太 × ⾼⽯晃 × 加納俊輔[三つの体、約百⼋⼗兆の細胞]」 札幌⼤通地下ギャラリー, 500m美術館 (2015, 札幌)など。