中川一政(1893-1991、文化勲章受章者)は97歳まで現役で描き続けた画家です。彼は80歳代を迎える頃から、画を取り囲む額縁も自ら手掛けるようになりました。自身の画が、既製の額縁では納まりきらなくなったと感じるようになったためでした。
「薔薇」や「向日葵」など油彩画の額縁には、木製のフレームに色を付けたり、線を描いたりしたもの、また彫りを施したものや、文字を書いたものなどがあります。日本画の額装では、画と額縁の間にあてるマットに、彩色や線描、また文様をかたどった自作の印を押し連ねたものなどがあります。一見奇抜に感じられる額縁も、画と合せて見ていると、絶妙のバランスで互いを引き立て、響き合うデザインであることに気付きます。
本展では、自作の額縁が用いられている作品を中心に展観し、画と響きあうデザインの妙を紹介します。また、中川のデザイン感覚がいかされた本の装丁にも注目して紹介します。この春、中川一政の額縁に注目し、新たな魅力に触れてみませんか。