この世では、私を理解することなど決してできない。
なぜなら私は、死者たちだけでなく、未だ生まれざる者たちとも一緒に住んでいるのだから。

スイス生まれの画家パウル・クレー(1879-1940)のこの言葉は、彼の作品を売り出した画廊の販売戦略に用いられ、孤独に瞑想する芸術家としてのイメージを広めました。確かに、詩情豊かなクレーの作品は謎めいているかもしれません。しかし同じ時代を生きたほかの多くの前衛芸術家たち同様、クレーもまた、仲間たちと刺激を与えあったり、夢を共有したりしながら、困難な時代を生き抜いたひとりの人間でした。
本展は、スイス・ベルンのパウル・クレー・センターの学術協力のもと、同センター、バーゼル美術館、日本各地の美術館から集めたクレー作品約60点を核に、カンディンスキー、ピカソ、ミロなど同時代の芸術家たちの作品を加えた約110点で、クレーの生涯にわたる創造の軌跡をたどります。彼を取り巻く社会的な状況も視野に入れることで、多くの人や情報が構成する星座=コンステレーションのなかでクレーを捉え直す機会となることでしょう。

◎全国巡回の最終会場です◎