トム・ハールは、ハンガリー出身で1940年に来日し、日本で活動した写真家フランシス・ハールの息子である。トムは1941年に東京で生まれ、戦時中には家族とともに軽井沢に疎開し、1960年に日本からハワイへ移住する。
その後、1968年にハワイ大学の大学院デザイン科を卒業し、ニューヨークへ渡ってフリーランスのカメラマンとして活動を始めた。日本語に堪能だった彼は、ニューヨークで日本人アーティストたちと親しくなった。
60年代、日本現代美術の黎明期にニューヨークに渡った日本のアーティストたちは、慣習や組織に縛られない自由な表現の場を求めていたが、70年代初頭、彼らはまだアートだけで生活することはできず、大工などの仕事を掛け持ちしながら、世界に自らの存在を確立しようと情熱を注いでいた。ハールは次第に、彼らの制作の現場や日常をフォトエッセイとして記録するようになる。1971年、ハールは草間彌生を撮影した。当時の草間はイーストヴィレッジ南部に住み、自身のヌードハプニングを公開上映していた時期である。撮影に際し、彼女自身が背景や服装、そしてポーズを考案したという。
今回LOAFでは、草間彌生をはじめ、15人のアーティストの若き日の姿をとらえたトム・ハールの貴重な写真を日本で初めて展示する。
撮影されたアーティスト:
草間彌生、猪熊弦一郎、川端実、木村利三郎、川島猛、桑山忠明、吉村文夫、中川直人、篠原有司男、脇田愛二郎、新妻実、佐藤正明、森本洋充、久保田成子、ナムジュン・パイク、オノ・ヨーコ、ジョン・レノン、シャーロット・ムアマン
また、〈二つのレンズ:ハール父子が撮った日本の芸術家の肖像展〉というタイトルの元、トム・ハールの父親のフランシス・ハールが1950年代に撮った日本の芸術家の展覧会〈 1950年代の日本の芸術家 〉も便利堂コロタイプギャラリーで開催される。