望月桂(1886-1975)は、日本でもっとも早いアンデパンダン展のひとつとされる黒耀会を結成した芸術家です。...
しかし望月の活動はそれだけではありません。黒耀会結成前には一膳飯屋を営み、社会運動家や労働者の集う場を形成していました。1920年代後半には犀川凡太郎の筆名で読売新聞に漫画を描き、その後に平凡社の百科事典の挿絵も手がけました。...
本展は、こうした幅広い活動と、その活動に貫かれた自由と扶助の精神を紹介するものです。開催にあたっては、長年望月を研究してきた二松学舎大学准教授の足立元(美術史・社会史)の呼びかけにより、美術館学芸員や地元地域の関係者、美術・文学・社会運動などの研究者、アーキビスト、ジャーナリスト、編集者らによる「望月桂調査団」が組織され、ご遺族の厚意のもと、3年前から資料調査を進めてきました。特筆されるのは、かねてより望月を敬してやまない風間サチコ、卯城竜太、松田修といった現代アーティストも調査団に参加し、本展のタイトルやロゴマークの考案、展示監修、映像制作といった役割を担うことです。こうした職業的立場を超えた連携による展覧会の立ち上がり方も、黒耀会の精神を今日的な視点から読みなおすための重要な導線となるでしょう。[美術館サイトより]