日本美術の長い歴史に通底する美意識として、「装飾性」が大きな特徴として挙げられます。装飾とは、「装い」「飾る」という意味の漢字で構成され、<decoration>や<ornament>を翻訳するために幕末から明治期にかけて使われるようになった言葉です。日本美術の大きな特徴として、輪郭線で形を捉えたり、限られた数の色で彩色を施したり、また、背景を余白として残したりと、物の実相を写し取るというよりも、その姿を平面的に描き表している点が挙げられます。この表現方法は、陰影のついたヨーロッパの写実的な絵画と比べると、物の色や形が単純化されることで、理想的な美しさが追求され、その独特の画法が、「装飾的」と言われるゆえんとなっています。もちろん、装飾性は日本美術の特色というだけではありません。世界中どこでも、人々は衣服を装い、家をインテリアで飾ります。「装い、飾る」行為は、私たちの心を豊かにし、そしてその行為自体が、芸術の根本のひとつを成していると言えるのではないでしょうか。

さて、本展覧会では、「装い」「飾る」ことに着目し、日本美術の装飾美を代表する円山応挙や竹内栖鳳、横山大観の日本画や、上村松園、鏑木清方、伊東深水など、美しい着物を身にまとった美人画、フランスで邸宅を飾る家具や花器を制作したエミール・ガレの作品、そして昨年新たに収蔵された葉山有樹の装飾性豊かな工芸作品など、ウッドワン美術館のコレクションを約90点展覧いたします。装い、飾ることを楽しんできた人々の営みに想いを馳せ、その豊かな実りをご堪能いただければ幸いです。