海に囲まれたラグーナの島々で生まれ育ったガラス作家達は、海や自然と関わりが深い生活環境の中で暮らし、創作の着想を得るために様々な生き物を注意深く観察することもありました。また、伝統的なヴェネツィアの飾り脚グラスには、古くからイルカや白鳥などのモチーフが用いられ、グラスの装飾性を高めてきました。

本展では、優れたデザイン性と高度な技術から生み出された「アートなガラスのいきもの」たちを一堂にご紹介いたします。
大胆かつ繊細で斬新な作風が見る者を驚嘆させるピノ・シニョレットの生命力あふれる作品や、ヴェネツィアガラスを牽引してきた2大巨匠アルキメデ・セグーゾとアルフレード・バルビーニの手による愛らしいいきものたち、ランプワーク界の巨匠ヴィットリオ・コスタンティーニの小さく繊細な鳥や昆虫、独特なモチーフをモダンに昇華させたVENINI工房やサルビアティ工房の作品。そして、華やかで装飾豊かなグラスに上品にあしらわれた、小さないきものたち。

硬く冷たい印象のあるガラスですが、作家達は作品を制作する過程で、1000度を超える高温で柔らかい状態のガラスに燃え上がるような命のきらめきを見ていたのかもしれません。
まるで本当に生きているかのような繊細で精巧な作品や、デフォルメされユーモラスな姿が愛らしい作品など、巨匠たちがガラスに魂を吹き込んで誕生させた“命のかたち”を、どうぞお楽しみください。