上野は、人間が使用するために作られた人工物を本来の用途から切り離すことによって、“もの”と“ひと”、“もの”と“もの”とのソリッドかつ等しい関係を再構築すべくインスタレーションアートを中心とした制作・発表を続けている作家です。マルセル・デュシャンのレディ・メイド・アートや1970年代日本の“もの派”など、「もの」にフォーカスした美術史のリサーチと実践をかさねつつ、千葉市の高校のオーケストラ部・打楽器への所属や、作曲・演奏を行うミュージシャンとしての経験もまた表現活動に活かされています。
近年は「表現(作品)のための“もの”」から「“もの”のための表現」へ、その意義を転換し存在を再考させるべく、古い実用自転車や明滅する蛍光灯、AMラジオ、CRTディスプレイ等のもの―道具を実際に利用し、機能や現象を組み合わせ/組み換えた作品を多く発表しています。
本展では、上野が通底させている“もの”性を自身の身体にも適用させた上で、アクティヴィティを記録した映像作品から、自発的に変化し集積し続けるサウンド作品、近年手がけている平面作品等を出展いたします。


[トーク・イヴェント](要申込・定員10名程度) 
5月17日(土) 18:00―
美術作家、三原回さんを招いて本展のトーク・イヴェントを開催します。
なお、開催中は展示がご覧いただけない可能性があります。

*お申し込みフォーム 
https://forms.gle/qxtz8VDiVnkrMi596


上野悠河 Yuga Uéno
幼少期より続く現代音楽への関心、高校生までオーケストラの打楽器に所属していた経験から1960〜70年代の美術史研究を経て、現代における人間や「もの」の相互作用に潜む複雑な問題を再考するために、完璧な関与が難しい「対象」とその振る舞いや関係性、有限性に焦点を当てた作品を発表している。レディ・メイドの道具や機材、その機能を実際に利用し組み合わせたサウンド・アートやインスタレーション・アートを主軸に表現しているほか、ミュージシャン「Mus’c」(ムスク)としても活動。
主な展示に、個展「ものたちは、歌い、蔑み、愛し合った」(千葉市民ギャラリー・いなげ/旧神谷傳兵衛稲毛別荘/千葉)、「SICF23 EXHIBITION部門 受賞者展」 (スパイラル/青山, 東京)、「ZOU-NO-HANA FUTURE SCAPE PROJECT 2022」(象の鼻テラス/横浜)など。「ClafT(中央線芸術祭)」に2021年から参加・出展、千葉国際芸術祭2025「ソーシャルダイブ」に選出・出展予定。
また「SICF23」大巻伸嗣賞、「第二回ISAC国際作曲コンテスト」Special Prize (Special Mentioned)、「島村楽器 録れコン2022」グランプリなど、展示/受賞多数。