東日本大震災から14年が経ちました。今回の展覧会は、古来豊かな文化を育んできた東北地方、この美しい地域の復興を祈念して、こけしを取りあげます。
こけしは、豊かな森林資源を有する東北地方を代表する木の郷土玩具です。その起源には諸説ありますが、江戸時代に木地師が湯治場のみやげものに作ったのが始まりではないかとされています。頭と胴のみというシンプルな形状ですが、東北6県に分布する産地毎に伝統的な約束事があり、それぞれ個性的です。それぞれの特徴を、師弟間で継承されてきた技法や産地特有の技法のつながりで分けて系統と呼びますが、その12ある系統のうち、過去に開催した「こけし」展では、ともに宮城県の系統である鳴子系と弥治郎系をご紹介しました。
この「こけしⅡ」では、宮城県の遠刈田系と福島県の土湯系、中ノ沢系に光を当て、比較から読み解く展示を試みます。系統毎に特徴的な胴模様でも、師匠と弟子の筆致の違いや、本人自身の経年によるモチーフの変化にご注目ください。父子の作風の違い、兄弟の色使いの差、本人の新たな挑戦など、それぞれの作品を比較することで読み解いていただきたいと思います。
今回の展示では、昭和戦前作を中心に、3系統を代表する魅力的な東北地方のこけしが勢揃いいたします。東北から遠く離れた関西地方の博物館で屈指のこけし収蔵点数を誇る当館「奈良では」の「天理のこけし」をぜひお楽しみください。