明治天皇の御肖像は御在世中、写真としては3回の制作が行われました。特に1回目の明治5年の撮影については、国家元首の写真を交換する外交儀礼の習慣に応える為、海外派遣中の岩倉使節団より急遽帰国した大久保利通や伊藤博文の奏請により撮影されました。天皇は写真の撮影をお好みにならず、翌年に洋装の御正服姿の撮影をしたことを最後に、以後は伊藤博文や侍従長の徳大寺実則の奏請による年齢に応じた再撮影についても聴許されませんでした。そして、3回目の制作は明治21年の東京芝公園内の弥生神社行幸の際、御陪食中の様子をイタリア人画家エドアルド・キヨッソーネに密かに拝写させたものを写真師の丸木利陽が写真として完成させたものとなりました。以後は、公式の御肖像写真としての制作は行われず、明治39年御改正の御軍服を着用された演習中の御姿を密かに謹写した写真数葉が遺され、崩御の後に晩年の御姿として制作された御肖像や御尊像には、これらの写真に拝する面影が垣間見られます。
本展覧会は、御肖像の中でお召しになられていた装束や洋服を展示し、激動の時代を国民と共に国づくりに勤しまれた御祭神をお偲びするものです。