江戸時代に生まれた浮世絵は日本の伝統美術として海外からの注目を集め、外国人の芸術家たちにも大きな影響を与えてきました。そして、浮世絵の伝統技術は大正時代に版元の渡邊庄三郎が興した「新版画運動」に継承されていきます。
渡邊は新版画の制作に必要な資金を調達するため、浮世絵の複製版画とともに明治40(1907)年頃からオリジナルな版画(新作版画)の制作に着手します。その制作を最初に依頼された絵師が高橋松亭でした。
令和7(2025)年は高橋松亭の没後80年という節目の年に当たります。これを機に開催する本展では、画業の最も充実した時期を大田区内で過ごした高橋松亭の風景版画に加え、同じく大田区内に長く居住し、風景版画の分野で新版画制作をリードした絵師・川瀬巴水の作品もあわせて展示します。渡邊を中心とする職人集団が築き上げた新版画を通じて日本の技と美をご覧いただきます。


《関連展示「高橋松亭×川瀬巴水ーいのち、いろどるー」》
会期:10月7日(火)〜11月24日(月・休)
高橋松亭と川瀬巴水といえば風景版画の絵師として著名ですが、実は人や花、動物たちも作画の対象としていきいきと描いてきました。どこか懐かしく、やさしいまなざしでとらえられた日々の情景。ふたりの絵師が紡いだ”いのちの世界”をお楽しみください。