TROLLEYでは、8/1(金)より鹿児島出身のアーティスト川井田健晃による展示「化のもの」展を開催しております。

川井田さんは建築設計で培った構造的な思考を背景に、クラフトブランド「STACK CONTAINERS」を立ち上げ、紙の端材や多様な素材を活かした作品を制作してきました。

また、川井田さんの作品に繰り返し登場するモチーフのひとつが「線」。それは形を区切る境界でありながら、日常に潜むフィクションを示す手がかりでもあります。

今回の展示「化(ケ)のもの」では、道端の石や壁の補修痕など、一見無関係な断片がふとした瞬間に“存在”として立ち上がる感覚をテーマとしています。視覚だけでなく感情や記憶の中にも潜むその瞬間をすくい取り、私たちのまなざしを再発見へ導く作品群をぜひご覧ください。






ふと目にしたものに得も知れぬ存在を感じることがあります。

道に転がっている石や壁の補修痕など、それは顔のようであったり抽象的な形でありながら不思議と愛嬌のようなものを感じたりする感覚のことです。 一見関係の無いものが集まって、何かの瞬間に新たな「存在」として出現する。 これは視覚的なことだけでなく、言葉や感情の中でも起こり得ることだと考えています。 今回の展示の話を進める中で、私はそれらの存在を「化のもの」と呼ぶことにしました。


私は縄文土器が好きです。それはこの地で最初の抽象表現だと考えているからです。 「土紐が成すカタチに何かを感じる」その発見が人類に与えた衝撃はいかほどのものだったでしょう。それを物語るように縄文土器は1万年以上にわたり作られてきました。 この「カタチに感じる」という発見は、あらゆるものに神が宿るというアニミズム的思想や漫画の効果線など、現代の私たちにおいても考える事や表現する事に多大に影響を与えていると私は考えています。
しかしAIなどが台頭するようになり、その思考や表現は徐々にヒトの手を離れようとしています。
「化のもの」の制作にあたり、私は改めてヒトの持つ根源的な感覚について考えるようになりました。目で輪郭をなぞり手で触感を確かめながら、これらにカタチを与えていきます。

「私たちは、まだカタチから何かを感じ取れているだろうか」

化のもの達が、生活の中でふと何かを呼び起こす存在となれば嬉しく思います。

                                         川井田 健晃