舞楽は宮中の諸行事や寺社の法会・祭礼において奏された、わが国でも最も長い歴史をもつ芸能のひとつです。平安時代にその原型が整備され、中世以降、各地に流布して発展を遂げた舞楽ですが、それらを中心的に主導していたのは宮中・南都・天王寺における「楽所」と呼ばれる雅楽演奏集団とその楽人達でした。こうした楽所は、宮中のみならず天野社や嚴島神社をはじめ、近世には江戸や日光へと楽人を派遣し、わが国の舞楽継承に大きな役割を果たしてきたことが知られています。
 本展はこうした舞楽の歴史を、舞楽を描いた舞楽図と、舞に用いられる舞楽面によって概観します。古代から近世にいたる各演目の舞楽面の造形を、舞楽が行われてきた「場」や舞楽を主導してきた寺社・楽所との関連の中で読み解くことで、その発展と広がりを一望し、京都・奈良・大阪を中心に育まれた豊かな芸能文化をご紹介します。