MOMENT Contemporary Art Centerでは、2025年10月17日(金)から2026年1月18日(日)まで、カナダ出身の写真家エヴ・カデューによるアジア初個展「J’AI VU LE FUTUR / 私は未来を見た」を開催いたします。本展では、2025年大阪・関西万博の閉幕を機に、万博が社会にもたらしてきた影響についていま一度検証します。

モントリオール生まれ、ケベック・シティー在住のエヴ・カデューは、25年以上にわたり、写真を通じて記憶や物質、消費文化に対する批評的実践を行ってきました。本展で展示される《J’AI VU LE FUTUR(私は未来を見た)》は10年以上継続されている彼女の代表的なシリーズです。カデューは、幼少期に1967年開催のモントリオール万博跡地を訪れた体験をきっかけに、世界各地に点在する万博跡地を撮影してきました。

かつて“未来の祭典”として開催された万博の会場跡は、姿を変えて現在も地域の人々に利用されているもの、そのまま放置され廃墟化が進むもの、今なお新たな役割を模索するものなど、さまざまな空間が存在しています。それらは歳月への適応の如何にかかわらず、それぞれの万博が示した「未来」との関係において矛盾をはらんだ空間ともいえます。

本シリーズにおいてカデューは、万博の跡地をこうした「実現しなかった未来」として位置づけます。それは加速する人間中心主義、社会・経済的不平等だけでなく、人類共通の「未来」という概念そのものがもはや有効ではないという、あらゆるイデオロギーの欠陥を指摘しています。

人類の進化と発展、そしていずれ達成されるべき平和を目指した万博のその後を写すカディユーの実践は、「未来」から置き去りにされた跡地に生きる我々の現在を再考するものです。