本展では、日本の抽象運動を牽引した長谷川三郎(1906-1957)や吉原治良(1905-1972)をはじめ、シュルレアリスムの実践者・伊藤久三郎(1906-1977)、浪漫の半抽象を描く菅野圭介(1909-1963)など、梅野記念絵画館初代館長をつとめた梅野隆(1926-2011)が40年以上にわたって蒐集した「梅野コレクション」の中から、時代を象徴する前衛作家たちを紹介します。
加えてコレクション外から、戦後の憔悴した社会から出発し、独自の手法でおよそ5000点もの絵画を描き続けた抽象画家・山田正亮の作品を展覧します。その絵はアメリカ・モダンアートと共鳴するかのような現代抽象の鼓動を感じさせます。戦後の前衛美術において特異な活動を示した山田は、1960年代のストライプ絵画が高く評価され、2016年には東京および京都国立近代美術館を巡回する大規模な回顧展が開催されました。
本展は、美術品コレクター・梅野隆の理念を引き継ぐ梅野記念絵画館ならではの、個人コレクターご所有の山田正亮作品が見どころです。展示作品の借用先はコレクターに絞り、コレクターズ・アイから見た作品の魅力を探ります。これまでに未公開の山田作品23点を含めた山田作品56点を中心に、時代をめぐる前衛作家の作品を大々的に展示する貴重な機会となります。
戦後を取り巻く前衛画家の物語と、空間を包むストライプ絵画の美の調和をお楽しみください。