京都工芸繊維大学美術工芸資料館では、「ポスターで見るアール・デコ誕生とその後」展を開催します。今から100年前の1925年、フランス・パリで「現代国際産業装飾美術博覧会」(Exposition international des arts décoratifs et industriels modernes)が開催されました。この博覧会で新たなデザイン潮流として注目されたのが「アール・デコ」と呼ばれるスタイルでした。アール・デコ様式は、工業化社会に対応した幾何学的な形態に様々な時代や地域の意匠を自由に盛り込んだデザインとして、グラフィックやプロダクトから建築まで幅広い人気を得ることになります。特にアメリカ東海岸で盛んに用いられるようになりますが、発祥とされるヨーロッパでは、装飾を排した機能主義的なモダンデザインの潮流にそぐわない「装飾過多」なデザインとして否定されることもありました。1960年代に入って当時のデザインの再評価が起こり、博覧会の名称からアール・デコと名づけられるようになりました。
 本展覧会では、1925年当時からそれ以降のポスター・デザインを通してアール・デコの魅力に迫ります。現代国際産業装飾美術博覧会のために描かれた数種類のポスターから、1920年代から30年代のアール・デコ・グラフィック黄金時代を支えたA. M. カッサンドルや里見宗次などのポスター、そして日本におけるアール・デコの反映とも言える単化デザインによるポスターまで、カラフルでモダンで装飾的なデザインの数々を通してアール・デコの華やかさとその影響の広がりを感じ取ってください。