京都高等工芸学校シリーズ第5弾は、ガラススライド(幻燈)をとりあげます。
京都工芸繊維大学の前身校のひとつ京都高等工芸学校は、明治35年(1902)、京都の伝統産業の近代化と新しいデザインをうみだす人材育成を目的として開校しました。同校では、当時最先端であった欧米の技術やデザイン潮流を取り入れるべく、教員らを洋行させるとともに、洋書をはじめ、参考となるポスターや工芸品など実物資料を海外から取り寄せて教材としました。その際、並行して収集されたのが美術品や建築物、博覧会の様子などが写されたガラススライドです。
幻燈は、スライドに描かれた絵や写真を光とレンズをつうじて拡大投影するもので、現代のプロジェクターの原型ともいえるものです。17世紀オランダで誕生し、マジック・ランタンとよばれてヨーロッパで人気を博しました。日本には江戸時代に一度渡来し、写し絵や錦影絵とよばれて娯楽として広がりましたが、明治初期に再渡来し、政府の主導により教育・啓蒙用のメディアとして学校教育や市民教育の場で活用されました。
本展では、京都高等工芸学校において開校初10年に収集された海外製のスライドの一端を当時の教材とともに公開します。古代ギリシャ・ローマの美術から同時代のアール・ヌーヴォーまで、初代校長の中澤岩太(1858-1943)をはじめ、浅井忠(1856-1907)や武田五一(1872-1938)ら教員たちが20世紀初頭のヨーロッパで何をまなび、何を生徒と共有しようとしたのか、その高精細な画像の美しさとともにお楽しみください。