『三等重役』などのベストセラーで「サラリーマン小説」という新しい分野を開拓し、富山県初の直木賞作家となった源氏鶏太(1912~1985)。近年では、山内マリコによる『青空娘』の解説が人気を呼び、その後文庫の復刊が相次いだことで改めて評価されています。
 源氏は富山商業高校卒業後、住友本社に入社し、約26年にわたって勤務を続けながら、サラリーマン生活の悲喜交々をあたたかく見つめたユーモアあふれる作品を次々に発表。勧善懲悪という自身の理想を反映させつつ、時代に即したその作品は読者の共感を呼び、小説を原作とした映画やテレビドラマも数多く作られました。生き生きとした会話で読ませる文体とストーリーの面白さは、今読んでも色あせない魅力があります。晩年は、サラリーマンの怨念や人間の心の闇を描いた「妖怪小説」へと関心を寄せていきました。
 本展では、源氏が生み出した代表作・話題作を中心に、作品世界の魅力や作家活動の歩みについて、自筆原稿や挿絵原画、写真、朗読などによりひもときます。あわせて、富山の新聞や雑誌に詩を投稿していた若き日の文学活動について、当時の貴重な詩のノートや掲載誌などによりご紹介します。