京都を拠点に活動する画家・松田啓佑の個展を開催いたします。
松田の作品は、抽象とも具象とも言い切れない独自の形象が、軽やかでスピード感のあるストロークと、選び抜かれた色彩によって立ち現れるのが大きな特徴です。一見すると自由で奔放に見える画面ですが、そこには既存の様式や「上手さ」への依存から意識的に距離を取り、「いま描くべきもの」を直接すくい上げようとする明確な制作姿勢が貫かれています。
作家は、アトリエでの高度な集中状態において、自己と世界が圧縮されて一体となり、やがて再び分かれていく瞬間に生じる“圧着痕”のような感覚を出発点に制作しています。揮発してしまうその感覚を、消えないうちに素早くなぞり取ることで作品が成立します。そのため画面には、計算された構図や演出よりも、出来事としての線やかたちが優先して現れます。
美術評論家・清水穣氏は、松田の絵画について「主体と世界がそのつど新しく分離生成する、その痕跡の絵画」であり、「絵画的効果への無関心と、揮発性の形態を追う速いストロークが制作原理から直接導かれている」と述べています。さらにそれは、舞踊や演奏にも通じる一種の“プレイ”としての表現であり、媒体を問わず立ち現れる身振りの記録でもあると評価しています。
説明や物語に回収される以前の、純度の高い出来事としての絵画。軽やかさと明るさを帯びたその表現は、見る方の感覚を新しくひらきます。この機会にぜひご高覧ください。