本展は、ロンドンを拠点とする彫刻家ルイス・デヴィッドソンと、東京在住の彫刻家・西永和輝による二人展です。二人はともにスレード・スクール・オブ・ファイン・アートの修了生であり、本展はその縁から生まれました。また、本展はルイス・デヴィッドソンを日本ではじめて紹介する機会となります。

デヴィッドソンは、社会空間に漂うプラスチックの廃棄物を収集し、アッサンブラージュによって新たなオブジェへと再構成します。本展に際して約一ヶ月間日本に滞在し、東京の街で素材を収集します。これらは、ロンドンで収集した素材と合わせて作品へと転化されます。西永は、建築的なフレームに石膏や粘土を附着・堆積させ、構造が崩壊していく過程そのものを定着させようとします。二人は、現代社会のような巨大な運動体が生みだすカオスに関心を寄せながら、一方はそこから再構築を試み、他方は崩壊の過程に注目します。ユーモラスな表現と悲劇的なビジョンという点においても、二人は対照的です。

本展のタイトル「Salvage/Adrift」は、どちらも海と破損した断片を想起させる語ですが、一方はそれを拾いあげ、他方は流れるに任されているという明確な差異があります。タイトルに含まれるスラッシュは、この差異を強調しつつ、両者を緩く結びつけるものです。

本展に際して、美術批評家・勝俣涼による寄稿テキスト『組織化のサイクル——ルイス・デヴィッドソン+西永和輝「Salvage/Adrift」』を SPACE NOBI のWebサイトで公開しております( https://space-nobi.net/exhibition/2026/salvage_adrift )。ぜひご一読のうえ、展示をご高覧いただければ幸いです。

ルイス・デヴィッドソン(Lewis Davidson)

ルイス・デヴィッドソン(1990年生まれ)は、ロンドンを拠点に活動。彫刻、アニメーション、サウンド、写真、インスタレーションなど、多岐にわたる表現手法を用いるデヴィッドソンは、日常的な素材を用いて、それらが持つ価値、目的、場所との結びつきを変容させようと試みている。彼の作品は、現代社会への関わりと、そこからの逃避という二つの要素を絶妙なバランスで融合させている。主な個展・二人展に、「Electric Fall」(Des Bains、ロンドン、2025年)、「KUNST-Stoff」(ザンクトガレン大学、スイス、2023年)、「Shallow Haunts」(Kupfer、ロンドン、2023年)、「CLICKERS」(Xxijra Hii、ロンドン、2022年)などがある。2019年にスレード美術学校で修士課程を修了(フェリックス・スレード奨学金および学部長奨学金受給)。卒業時にはアルマカンター・スタジオ賞を受賞し、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の学術優秀者リストにも名を連ねた。
デヴィッドソンの作品はスイスのザンクトガレン大学の常設コレクションに収蔵されている。

西永和輝

東京在住。彫刻家。2016年武蔵野美術大学彫刻学科卒業、2019年スレード・スクール・オブ・ファイン・アート修士課程修了(江副記念リクルート財団第47期奨学生、エドワード・アリントン賞受賞)。人工的な構造と有機的な形態、設計されたものと時間による変化が、分離できない状態で接している界面に注目し、そこに蓄積する不完全な翻訳を形にする彫刻作品を制作。近年の主な展覧会に「Rampant」(callbox, 東京, 2026)、「巣喰ウ装飾」(Gallery 美の舎, 東京, 2022)など。