フォーカス
視覚表現の可能性とアートの無限性を見せた異質な展覧会二選
梁瀬薫
2013年02月01日号
その他 ニューヨークの話題展
Leo Villareal, "Buckyball"
23丁目のマディソン・スクエア・パークに設置された巨大なLEDライトのパブリックアート。やわらかいプラスチック製の幼児玩具を思わせるこの「バッキーボール」と題された球体は、1985年に発明家で思想家であるバックミンスター・フラーに敬意を表してバックミンスターフラーレンと名付けられた分子式C60の球状分子がモチーフだという。
Jean-Michel Basquiat
バスキアの重要な絵画作品ばかり50点を一同に集結。広大な展示空間での設置は美術館展覧会以上の規模。展示、作品ともにクオリティーの高さに目を見張る。
”Blues for Smoke”
ロサンゼルス・カウンティー美術館のベネット・シンプソンのキュレーション。20世紀から21世紀アメリカのアートと、ブルース、ジャズ、ヒップホップといったアメリカの音楽との相互関係、影響を探求する。
Cyprien Gaillard “Chrystal World”
ベルリン在住のフランス人アーティスト、ガイヤールによる複雑なインスタレーション。地学と心理学に基づき、写真、ビデオ、彫刻、絵画などさまざまな媒体を駆使して、建築と自然、進化と浸食の関係を提示。
Wolfgang Laib
ヘーゼルナッツの花粉で敷き詰められた荘厳なインスタレーション。ヴォルフガング・ライブは現代のドイツを代表するアーティスト。大学で医学を専攻したライプは、近代の科学が人間の生と死、心や精神の問題を扱いえぬことに深く失望して芸術へと転じた。花粉を毎日繰り返し集める作業から淡々と花粉を床に落としていく曼荼羅のような過程も作品の一部だ。
Outsider Art Fair
1993年から始まったアウトサイダー・アートフェアは今年からチェルシーにて開催。米国内だけでなくヨーロッパや日本も含め、40以上の団体と画廊が出品。アウトサイダーアートは、ヘンリー・ダーガーをはじめとする、いわゆるアートシーンのメインストリームから外れた、どこにも所属しないような独学色の強いアート。プリミティブやフォークアートの傾向も強い。子どもの絵画作品にあるような楽しく、あるいは純粋な画風も心を惹かれる。