フォーカス
MAC/VAL ヴァル=ド=マルヌ県現代美術館
ステファニー・エロー
2009年05月01日号
新しい常設展示
新しい常設展示はMAC/VALのコレクションを「内的な旅への誘い」として構成します。「Je reviendrai 私はまた戻ってくる」と題された常設展全体を通して、来館者は、ここに集められているアーティストたちの想像世界を自分のものにすることができるでしょう。
旅をする、出発する、離れる、運び去る、想像する、夢見る、期待する、探す、見つける、作る、実現する、戻る...これら行動を表す動詞が、展示経路にそって所々に並んでおり、作品の流れに沿って美術と人生の物語を語ります。
独自のアプローチで、動き、亡命、旅、夢と関連する物語に焦点を当てます。暴力的あるいは詩的な方法で、人生の長い旅へと漕ぎ出した個々人の物語です。道の先に何を求め、何を構築するのでしょうか?
3つの作品に注目:
1990年はじめより、アラン・ビュブレ(Alain Bublex)は、町や風景を見るユートピア的な独自の見方を創り出すことに腐心してきました。
《プラグイン・シティー》(Plug-in city)シリーズは、1960年代に前衛建築家集団アーキグラム(collectif Archigram)が考えた想像上のプロジェクトに着想を得ていますが、永遠の工事現場のように描かれた風景画とともに、《ディナー・タイム》(Dinner Time)も、その延長線上にあります。《ディナー・タイム》は現実に新たな価値を与え、21世紀の都市の原型をつくりだしました。
ニューヨーク在住の韓国人アーティスト、キムスージャ(Kimsooja)のビデオ作品《ボタリ・トラック—移住者》(Bottari truck – Migrateurs)は、亡命について問題を投げかけます。この作品は、MAC/VALとパリのサン・ベルナール教会で実現した成果をレポートしています。注意深く選んだ移動順路は象徴的な道筋を描きます。あらゆる意味においてたくさんの物を背負ったキムの道筋は、亡命と祖国喪失の難しさを考えさせ、パリのサン・ベルナール教会に到着する場面は、今日の不法入国者の悲劇的な状況を思い起こさせます。
ジャン=リュック・ムーレン(Jean-Luc Moulèn)の《恋人たちの泉》(La fontaine aux amoureux)のような写真では、旅はすべての人のものです。旅は日常の中にも存在し、ありふれた風景に秘められた素晴らしさを見つけ出すのもまた旅である、ということを示しています。
展示されているアーティスト
Pierre Ardouvin, Davide Balula, Elina Brotherus, Alain Bublex, Claude Closky, Philippe Cognée, Michel de Broin, Ara Güler, Shilpa Gupta, Valérie Jouve, Kimsooja, Peter Klasen, François Morellet, Jean-Luc Moulène, Melik Ohanian, Cécile Paris, Gwen Rouvillois, Sarkis, Daniel Spoerri, Nathalie Talec, Hervé Télémaque, Laurent Tixador et Abaham Poincheval, Barthélémy Toguo, Patrick Tosani, Tatiana Trouvé, Vladimir Velickovic, Sabine Weiss.
ヴィトリー=シュル=セーヌ市コレクション
François Bouillon, Florence Chevallier, Christine Crozat, Marie-Jeanne Hoffner, Christine Rebet
企画展
Nocturne / Alain Bublex ノクチューン/アラン・ビュブレ
2009年3月6日〜2009年6月7日 MAC/VALが「アーティストへの白紙委任」プロジェクトで最初に招待するアーティストはアラン・ビュブレです。アラン・ビュブレは、自分の作品と作品の流れのなかで構築される関係を再考し、美術館の展示に二重の意味を持たせます。新しい作品と古い作品が展示の演出のなかで同居し、全体でひとつの作品を作り出します。
Noël Dolla " Léger vent de travers " ノエル・ドラ“通り抜ける軽やかな風”
2009年3月6日〜2009年8月2日 ノエル・ドラは本質的に変化自在のアーティストです。ひとつの描き方に長く留まるということがありません。実験的な制作方法、冷熱、大きな亀裂、伝記的迂回、内密の帰還といった絵画のゲームを即興的に再開する能力や運動能力が彼の作品に常に見られる手法です。ヴァル=ド=マルヌ県現代美術館のために、ノエル・ドラは、最近の作品と古い作品を組み合わせ、来館者がこの大胆な画家の制作の道筋をたどれるような展示を提供します。