2019年11月15日号
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フォーカス

「夢の時代」のデザイン

柏木博(デザイン論・デザイン史/武蔵野美術大学教授)

2009年11月15日号

 10月から11月にかけては、東京デザイナーズウィークなど、デザインに関する催し物が多く開催される。そうした催し物とはおそらく直接リンクしていないと思うのだが、東京オペラシティで「ヴェルナー・パントン展」が開催されている。

 これまでにも北欧デザインの展覧会が日本で少なからず開催されているので、パントンのデザインはある程度知られているし、なによりもFRPを素材にした「パントン・チェア」は、若い世代を中心に、近年、再び人気となっているのでパントンは、ポピュラーなものとなっている。パントン個人の展覧会は、日本ではあまり企画されてこなかったように記憶する。2005年にニューヨークでパントンの展覧会を見たが、不完全な印象が残った。一方、今回のこの展覧会は、小さくはあるがパントンのデザインの特性をよくまとめたよい展覧会になっているといえる。
 会場入口には、導入として1953年にデザインしたバチェラー・チェアが展示されており、これを見ると、金属フレームに布をはったシンプルな構成が、いかにもデンマークあるいは北欧のデザインという印象を与える。とはいえ、51年に同じように金属フレームに薄い皮革をはった、ポール・ケアホルムのPK22のデザインを思わせつつも、ミース・ファン・デル・ローエのバルセロナ・チェアへのオマージュというPK22が持つ高踏的なデザインではない。むしろ量産をテーマにしていることがうかがえる。
 量産を前提にしながらも、時代の気分を採り入れつつ、強い色彩、そして色光を取り入れたウレタンで形成された有機的なインテリアなどパントンの特性を明確に伝える展覧会となっている。


ヴェルナー・パントン展、東京オペラシティアートギャラリーでの展示風景(2009)
撮影:木奥惠三
An exhibition of the Vitra Design Museum, Weil am Rhein, Germany

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