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Tokyo Art Directors Club Award 2009 2009ADC展 in ドイツ・フランクフルト

三好美恵子

2009年12月15日号

 クリスマスの準備で賑わうドイツ・フランクフルト、マイン河畔の一角にあるフランクフルト市立応用芸術博物館で、11月26日から「Tokyo Art Directors Club Award 2009」が開催されている。この展覧会は、今年、夏から秋にかけてギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)、クリエイションギャラリーG8、dddギャラリーで開催された「2009ADC展」の巡回展で、日本の広告・グラフィックデザインのいまを紹介している。


日本を飛び出した日本の広告とグラフィックデザイン

 「ADC展」は日本のトップクラスのアートディレクター78名で構成される東京アートディレクターズクラブ(ADC)の年次公募展で、その全会員による厳正な審査で選ばれたADC賞をはじめ、今年の優れた広告やグラフィック作品を展示、紹介している。2009年はポスター、新聞・雑誌広告、パッケージ、エディトリアル、ディスプレイなど多様なジャンルから、あわせて約10,000点の応募作品があり、そのなかから4日間にわたる厳正な審査によって選ばれた作品は、日本の広告やデザインの動向を知るものとして注目を集めている。
 このたび、初めてドイツ・フランクフルトでの「2009ADC展」が展覧会が実現された。


東京・で行なわれた「2009ADC展」チラシ。左からggg、G8、ddd

 今回、なぜドイツでこの展覧会を開催することになったのかというと、ひとつには、ドイツにもADCという組織があることがあげられる。東京アートディレクターズクラブの設立は1952年であり、ドイツADCはそれから12年後の1964年にドイツのデュッセルドルフを本部として設立された。しかしアートディレクターを中心にフィルムディレクター、クリエイティブディレクター、コピーライターなど個人として加盟し構成されている日本と違って、ドイツでは広告代理店などが組織に加盟している。その点からも日本のアートディレクターの活動や日本のコミュニケーションデザインの現状に彼らは大変興味を持っていた。このADCという同様の組織が縁となって、日本の広告やグラフィックの展覧会が開催されることとなった。

会場と展示作品

 展示会場は、アメリカの建築家リチャード・マイヤー氏によって建てられた応用芸術博物館の白い3階建ての建物の一部分であった。展示作品は、現地学芸員やスタッフにより慎重に選ばれ、整然と展示されていた。新幹線のシンプルでスマートなポスターや、老舗和菓子店のポスター、世界的にも知られる日本企業のポスター、おなじみの犬がお父さんになった新聞広告など、日本でよく見る広告が不思議とその空間になじんで並んでいた。
 また、中央には、恐らく普段は、工芸品などが並べているであろう展示ケースが置かれ、その中には香水やお茶のパッケージ、ブックデザイン、小型グラフィック作品が並んでいた。そのなかのひとつ、ADC賞受賞作品「NEWSPAPER to NEW PAPER」は、新聞紙に色鮮やかな格子やストライプの模様をデザインした野菜用のパッケージで、想像をかき立てるデザインとエコロジー的な発想にとても注目が集まった作品のひとつであった。また、今年のグランプリ作品である、21_21 DESIGN SIGHT「祈りの痕跡。展 浅葉克己日記」の空間とグラフィックデザインでは、アートディレクター浅葉克己氏の7年間の日記をまとめた7冊の冊子が披露された。その日記は独特のカリグラフィーとグラフィックで構成され、そのデザイン力、企画力は言葉の壁を越えた迫力を漲らせていた。




フランクフルト会場、展示風景

ADC展が語るものとは

 今年のADC展の作品は、この社会の厳しい時期を反映してなのか、確かに企業の大キャンペーンから生まれた広告などは少なく、もっと私たちの生活に寄り添うような身近な作品が多かった。これは、良いデザインが日常に溢れることで、毎日の生活が楽しくなり、それが社会を変えていくことに繋がるという、日本のアートディレクターの強い意志の表われではないだろうか。日々、模索を続けながら、活動の領域を広げつつある日本のアートディレクターの仕事がドイツの人の眼にどのように映るのかとても楽しみである。

Tokyo Art Directors Club Award 2009

会場:フランクフルト市立応用芸術博物館
   Museum fur Angewandte Kunst Frankfurt
   Schaumainkai 17, 60948 Frankfurt am Main
会期:2009年11月26日〜2010年2月14日