フォーカス
市場に新しい旋風を送る冬季アート・フェアとアカデミックな美術の伝統を引き継ぐAICAUSA AWARD(全米美術評論家連盟アワード)
梁瀬薫
2010年03月01日号
米国美術評論家連盟2008-2009年度アニュアル・アワード
AICA/USA Awards Winners 2008-2009
http://www.aicausa.org/
2月16日グッゲンハイム美術館で開催された全米美術評論家連盟によるアワードは年間を通してもっとも評価の高かった美術館展覧会、画廊展覧会、パブリックスペースなどに送られる賞で、通称アート界のアカデミー賞とされる権威ある賞だ。審査は全米中の美術評論家連盟に所属する約400人の投票によって行なわれるが、アーティスト個人や作品にフォーカスを当てるだけでなく、展覧会自体のコンセプト、そして企画内容、展覧会の展示内容を含め、プロジェクトを組織したキュレーターが評価の対象となる。今年はパフォーマンス部門、デジタル・メディアと映像部門、建築・デザイン部門が加わり、社会とともに多様化するアートの表現を提示するものとなった。
今年の全米美術館個展部門で最優秀賞を受賞したウィリアム・ケントリッジ(南アフリカ出身ヨハネスブルグ在住)の「5つのテーマ」展はノートン美術館(ウェスト・パーム・ビーチ)とサンフランシスコ近代美術館が組織し、マーク・ローゼンタールがキュレーションした大規模な巡回展で、ニューヨーク近代美術館でも開催されるが(2月24日〜5月17日)、キュレーターは、幅広い学問の分野にアプローチしているケントリッジの作品から、社会と政治の矛盾、植民地の圧迫、喪失と統合、そして生命や自然、そして文化の記憶のはかなさを、いかにして観衆に訴えられるか、という基本的なそして最も困難な仕事をやってのけた。
また、ニューヨークの商業画廊展部門で最優秀賞を受賞したガゴシアン画廊の「ピカソ:ムスカテール」展はニューヨークタイムズに「今世紀ニューヨークで見なければならない画廊展のひとつ」だと称されたほど、ピカソの後期作品を収集して見事な展示を打ち出した。一般のほとんどの観客は素晴らしいピカソの作品に魅了されるが、その裏で長いプロセスと多大な努力で展覧会を築いたキュレーターのジョン・リチャードソンの業績が評価され、授賞式の会場は拍手に沸いた。
AICA/USA Awards Winners 2008-2009 最優秀受賞展覧会リスト
全米美術展覧会個展
ウィリアム・ケントリッジ「5つのテーマ」
全米美術館主題別展
「2つのドイツのアート/冷戦文化」
ニューヨークの美術館展個展
フランシス・ベーコン「世紀の回顧展」
ニューヨークの美術展主題別展
「The Third Mind: アメリカ作家が見たアジア, 1860年-1989年」
ニューヨークの商業画廊展
「ピカソ:ムカテール」
全米商業画廊展
「ジョン・アルトゥーン:ドローイング 1962年-1968年」
非営利画廊、スペース
「ユニカ・ザーン:暗い春」
大学付属美術館展
「布の詩:アフリカのテキスタイル 最近のアート」
「陽だまりの土:鼓動で造形された土」
パブリック・スペース展
「ザ・ハイライン NYC」
建築、デザイン展
「フランク・ロイド・ライト:アウトワードの中から」
歴史展
「ジェームス・アンサー」
デジタル・メディア、ヴィデオ、映像展
「ピピロッティ・リスト:Pour Your Body Out (7354 Cubic Meters)」
パフォーマンス展
「イヴォンヌ・ライナー:ロス・インデクシカル(2007)、スプリング・ダウン(2008)」