フォーカス
ニューヨークのクールな夏のショウケース
梁瀬薫
2010年08月01日号
若手アーティストを発掘する、ニューヨーク近郊のアーティスト展
Greater New York 2010
2010年5月23日〜10月18日
PS1美術館
「グレイター・ニューヨーク」展は、5年に一度、PS1美術館とモマ(ニューヨーク近代美術館)が、ニューヨーク市外から優れた新人アーティストを発掘し、新しい時代の、新しいニューヨークのアートを探求するために企画している大規模な展覧会である。今年で3回目を迎えた。モマのキュレーター、クラウス・ビーゼンバッハ、コニー・バトラー、そしてフリ─ランス・キュレーターのネヴィル・ウェイクフィールドにより、68人が選ばれた。前回は160人以上のアーティストが選ばれ、ホイットニー美術館が開催している2年に一度のバイアニュアル展と比較され、華やいだ印象があったためだろうか、ヴィレッジ・ヴォイス誌は「キュレーターたちは眠っている新人作家を探し当てられなかった」と縮小されたかのようなショウだと評したが、5年前にはなかったフェイス・ブックやツイッターズの時代に生きる新しい世代のアーティストたちの試験的な表現は、興味深いコンセプチュアルなものが多かった。シャロン・ヘイスのシアトリカルなビデオ・インスタレーション『革命的な愛:私はあなたの最悪の恐怖、私はあなたの最高のファンタジー』や、ライアン・マクナマラはギャラリーをダンス・スタジオとし、ダンスの講師を招きそこで実際にダンスのレッスンをするというパフォーマンス的なプロジェクトなど、少なくとも今後のアートの行方を示唆する展開となった。
おすすめ展&トピックス
キキ・スミス展 Kiki Smith: Sojourn
18世紀の編み物、プルーデンス・パンダーソンの格言から影響され、女性の一生のサイクルを追った、サイトスペシフィックなインスタレーション。現代のフェミニズム・アートとはまた系統の異なる態度だ。さらに宗教やミスティカルで個人的なシンボリズムを効かせ、紙粘土や花などを使って、死を優しく包んだような表現が詩的だ。
クリスチャン・マークレーのフェスティバル Christian Marclay: Festival
音楽とパフォーマンスで構成されたユニークなプロジェクト。現代美術におけるマルチメディアのスターの座に君臨するマリーナ・アブラモヴィックのNY近代美術館でのパフォーマンス・インスタレーションが最近では大きな話題を集めたが、マークレーのプロジェクトはどちらかというと、80年代のソニック・ユースを彷彿とさせるノイズ。
ピカソ展
同美術館の収蔵作品から300点以上の貴重な作品が公開されている。今後同美術館で、この規模のピカソ展が開催されることはないだろうと言われているほど大きな規模となった。昨年から続いているニューヨークとロンドンでのガゴシアン画廊での美術館規模の展示、NY近代美術館で開催されている写真展をはじめ20世紀の巨匠を再考する展覧会が相次いで開催されている。
スタン・ツインズによる竹のインスタレーション
Doug + Mike Starn on the Roof: Big Bambú
80年代には写真のコラージュによる作品などを発表していた双子のアーティスト、スタン兄弟によるパブリック・アート。竹をふんだんに使った巨大なインスタレーションで、空に伸びるような塔を作った。観客は組み立てられた竹を登って体験できる。連日開館とともに列ができる、この夏一番の人気のアートとなっている。
グッゲンハイム美術館とYouTube(ユーチューブ)による動画作品一般募集『YouTube Play』
グッゲンハイム美術館と世界最大の動画共有サイトであるYouTubeが、動画作品を世界中から募集している。卓越したオンラインの動画作家の発掘を目的とし、アニメーション、モーション・グラフィックス、ドキュメンタリー、ミュージック・クリップなど動画であれば応募できる。美術館では最大200点を選んで、YouTubePlayのサイトで公開する。さらには10月に同館の分館があるベルリン、ヴェニス、ビルバオでも同時にプレゼンテーションされる予定だ。審査員は村上隆、ダグラス・ゴードン、シリン・ネシャット、ローリー・アンダーソン、アニマル・コレクティブなど、アーティスト、デザイナー、映像作家、ミュージシャンなど幅広い分野から選ばれた。審査員は各20点を選出する。締め切りは7月31日。6月の時点ではすでに6,600点が集まっている。