フォーカス
インタラクティブの仕掛け
太田佳代子
2010年11月01日号
オラファー・エリアソン「Notion motion」
一見単純なインスタレーションながら、じつは深淵な背景が仕掛けとしてあるアイの「ひまわりの種」。それと対照的なのが、この秋ロッテルダム・ボイマンス美術館で展示されたオラファー・エリアソンの「Notion motion」である。
美術館は3つの巨大な実験装置と化した。いずれも、観客の動きが水の動きに、水の動きが光の動きに連動する、インタラクティブ作品だ。観客は好奇心を働かせ、自発的に動くことによって、光の変化のからくりを理解する仕組みになっている。観客が媒体となって生まれる光はたえず変化し、独特の美しさを放ち、一種の感動さえもたらす。
ふだんは芸術作品の間を歩きまわる場所で、観客は実験装置の中を行ったり来たりし、大きな機械仕掛けの中に入り込んだような感覚を味わう。飛んだり跳ねたりしては大声をあげて喜び、笑いあう。こんなに楽しいアート作品は、エリアソンならではのものだ。
5年前、ボイマンス美術館の委嘱によってつくられ、再び公開された「Notion motion」。インタラクティブの仕掛けを楽しみながら、アートのインパクトに打ちのめされる快感も与えてくれる傑作だった。