――今回のひさしぶりの日本での個展「メイド・イン・すみだ」はいかがでしたか?
これは、私にとっては今までと違う表現を取り入れた実験的な試みだったし、結果的におもしろかったプロジェクト。
ふだんからあたためていたアイデアがあって、よし、これを作ろう、というのではなく、アサヒビールからアーティストと異分野のコラボレーションという企画の第2弾として、私が決めたのではなく最初から墨田区の町工場とのコラボレーションというお題が決まっていた。
だから、コラボレーションって言われても、うーむ、なにするとコラボレーションなんだろうって。
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「メイド・イン・すみだ」展示風景 写真提供=アサヒビール株式会社
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――見逃した人がいるかもしれないので、どんな展覧会だったか解説してもらっていいですか?
私が30近い工場見学をした際に取らせてもらった工場の生産の音や町工場の人の語りなどを使ったサウンド・インスタレーション。バルーンのオブジェ。見学させてもらったところのおもちゃ屋さん、シール印刷屋さん、鉄工所などふだん横のつながりのない工場の人や、地元で30年商売してる中華屋さんなどに集まってもらって、仕事や愛など語り合ってもらった座談会ビデオ。
ほぼ同じメンツで敢行した工場見学・アンド・お花見バスツアーのビデオ。ものとしての鉄の切り子(あのパーマみたいにクルクルしてるやつ)や吸盤で壁面を埋め尽くすインスタレーション。
墨田区の住宅地図をランダムに選んで町工場ばかりをピンクで塗りつぶした花吹雪の絵みたいなドローイングなどなど、いろんな角度からみた側面として展示しました。
町工場って小回りが利くから今週は子どものおもちゃのパーツをつくって来週は大人のおもちゃのパーツ作ってたりしかねないのでいきなりアーティストが来てこれ作ってって頼んでも「えーっ」て驚かない。普段の仕事と同じ感覚なのでこれはコレボレーションにならない。
まずは知ろうと思ってビデオカメラ片手に工場見学を始めたけど、たとえばシャンプーボトル屋さんにいってクマちゃんの形のシャンプーボトル作ってと言っても作るための機械は同じで先ッチョにつける雛形というか金型を差し換えるだけなんだけど、その金型だけで100万円かかるし、ふだんの受注生産と何も変わらないことがよくわ分かった。これもコラボレーションにならない。
というわけで、なにか一緒に考えたりすること、そのプロセスを作品として提示しようと思って座談会ビデオなど作りました。
今回制作期間が半年だったけれど、もっと時間があったら、商品開発編とか、プレゼン編とか、連続ドラマみたいに状況が進行してゆくビデオを続けて作ってみたかった。
――フィールドワークや地元の人(工場で働く人々)とのコラボレーションワークというのは、これまでの制作とはどのように違いますか?
宮田【二郎】もそうだったけれど、人とのかかわり方、コミュニケーションがよりダイレクトに制作のプロセスにかかわってきたのが違うところだと思います。
普段の制作の中でも、絶対にひとりじゃできない部分てあって、いろんな人を巻き込むことになるけれど、そういうプロセスそのものが最終的な作品の表層には出てこないので、今回のように制作プロセスそのものを藁しべ長者的に楽しんだのはかなり違った部分かな。
――うさぎが好きだね。以前より動物のキャラクターが作品に登場するけど、どうして?
以前からも結構動物ネタありましたよ。パンダとか、インコとか……。昔のことですけれど。
――今回の水色のウサギの作品には、噴水のようにポンプ式でプラスティックのキューブ片が飛んでいたり、工場の人のインタヴューが実際の製品や素材から聞けたりと、音が印象的に活用されていたけど、これまでも音を作品に取り入れることはあったのかしら?
ないない、音に気を使ったのは今回が始めて。ウサギのおなかにプラスチックパーツを詰め込もう、はじけさせよう、と思ったときは音のことは考えていなかったけど、出来上がってみたときに大粒の雨をテントの中で聞く音みたいで悪くないなと思った。
インタヴューを音にしたのは、映像って圧倒的に聴覚より強いし、逆に視覚がないほうが臨場感が出るかなっと思ったから。ついでに言うと、最初は工場のメカに興味があって、映像として撮っているのだけど、そのうち人の語りのほうが面白くなって、途中からインタヴューに重点を置くようになる。
それと全員じゃないけど結構やばい話をしていて、匿名にしてほしい人がいたり、町工場って大手の下請けが多いので、どこの会社の何を作っているか映されちゃ困る人とか、外の看板に出ているものと違うものを造っているので映されたくない人、とかいろいろな理由があるの。
映像としてはかなりかっこいいものが取れたのだけど、人目に触れて困るのは彼らで、美術という名のもとにそういう暴力をふるうのはいかんなと思って使うのをやめた。
――「宮田ロボット」は、映像でみるより、実際に動いているものを見たい気がするけど。無理なのでしょうか?
私が路上でパフォーマンスを行なっている状態で見にきていただけるとOKだけど、美術館や展示空間でお客さんがきたからスイッチを入れる、というのはただの見世物小屋感覚なのでやりたくない。何度かそういった見せ方を断ったことがある。
――今回の展示では、世界各地で行なったパフォーマンスの様子がヴィデオで流れていたのだけど。国別で反応は違ったの?
ぜんぜんちがった! 大阪の人が東京にきても大阪弁話すみたいにフランス語しかしゃべらないと思っていたフランス人が、自分の聞きたいことがあるとちゃんと英語にスイッチして話しかけてきたり。勝手にフランス人はもっとツンツンしているものだと思っていたけど、それはロンドンで行なったときに感じたことで、フランス人って意外に人なつこい。
リオではたまたまお隣のペルーでフジモリ元大統領のことが騒ぎになっていた時期なので、フジモリがどうのこうの、となったり。宮田のバッテリーが、フジモリのバッテリーとしてせりにかけられそうになった。
ロンドンは話しかけてくるのはアフリカ系とかの有色系の移民とお見受けする人ばかりで、日本みたいにブーブラック【←?】の背広を着ている当のイギリス人は、日本の大手町と同じで見て見ぬふり、という反応があったり。
ニューヨークはみなが子供みたいに興味津々であれこれ話しかけてくる。ビジネスマンはシンパシーを感じるといい、買い物客はなにかの宣伝かと尋ね……。
アムステルダムではたまたま前日に皇太子夫妻が宿泊していて、それを知らずに宿泊していた古い宮殿みたいな建物がある広場でパフォーマンスして、ポリティカル・アクションだと思われたり。
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