クローディアとエドは二人とも彫刻家で大学教授、夫婦で25年以上このジャンルの作品を集めている。彼らは意図的に収集を始めたのではなく、気づいたら作品が増えていたという状況らしい。作品以上に作家たちに興味があって、ほとんどの場合作家と実際に会って作品を購入しているそうである。アメリカではアウトサイダー・アート(アントレインド、セルフトート、フォークアートなど呼び方は様々だが、正規の美術教育を受けていない人たちのアートをさす。精神障害をもつ人も多い)は大変な人気で美術の分野としても確立しており、毎年大きなアートフェアが開かれるほどだという。しかし、作品売買に関して無頓着なアーティストにつけ込んで作品をだまし取る悪徳ディーラーがいたり、商売目的で作品を作らせる人が出てきたりと、人気が高まったゆえの「搾取」の問題が起きているらしい。そもそもが商売と遠いところから派生しているアウトサイダー・アートが抱える現在のジレンマである。
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安西水丸氏は、アメリカ南部のアウトサイダー・アートと出会ってからすっかりファンになり、『アトランタの案山子、アラバマのワニ』(小学館)というアーティストたちとの出会いを綴った著書を出している。彼は、仕事がら慣れによってどんどん絵が「上手く」なってしまうことのつまらなさを警戒しており、アウトサイダー・アーティストたちの真に「描きたい」という気持ちのみで描かれた作品に触発されるのだという。日本の偏った美術教育によって、好き、作りたい、描きたいという気持ちが失われがちである状況を嘆き、「皆さんも下手でもいいから好きなように絵を描いてください。そういう人がどんどん増えてほしい。」と呼びかけていたのが印象的だった。
今回展覧会で紹介された作家たちは、多くがアメリカ南部に住む黒人で、貧しかったり精神障害があったり、苦しい生活を強いられている人も少なくない。しかしその状況に反して作風はポップで色は鮮やか、脳天気なほどの明るさが感じられるのである。このことについて安西氏は、「一見明るい彼らの作品にはブルースのような哀愁が漂っている。抜けるような明るさは、決して明るくはない現実生活との対比として存在するのではないか。」と述べていたが、鋭い指摘だと思った。