Aug. 20, 1996 Sep. 10, 1996

Art Infomation Index - Sep. 3, 1996


【スタジオ食堂の緊急課題!】……………………● 村田 真

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スタジオ食堂
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スタジオ食堂の緊急課題!

●村田 真



スタジオ食堂とは、立川にある廃工場の食堂跡を改造した共同スタジオのこと。と同時に、そこを使用している8人の若いアーティストのゆるやかな運動体でもある。

スタジオ

スタジオ食堂の前身は、立川駅から徒歩10分の地にある旧リッカーミシン工場の社員食堂。1994年、メンバーのひとりがこれに目をつけて交渉し、知人に声をかけて共同スタジオとして借りられることになった。広さ約1000平方メートル(約300坪)、天井高約6メートルの広々とした空間を、およそ50平方メートルずつのブースに分割してそれぞれが制作場に使い、残りのスペースを共有。現在の家賃は約40万円。雑費を含めてひとり7〜8万円の負担というからラクではない。

メンバー

途中出入りはあったものの、現在のメンバーは、中山ダイスケ、坂東慶一、藤原隆洋、笠原出、須田悦弘、中村哲也、松下ユリ子、尾上由希子の計8人。年齢は20代後半(26〜28歳)に集中しているが、作品傾向も出身大学もバラバラ。たとえば、中山は武器をテーマにしたインスタレーション、藤原はバイブレータを思わせる動くオブジェ、須田は植物をリアルに再現した木彫といったように、ひとつのイズムで彼らをくくるわけにはいかない。あえて共通点を探せば、全員が作品を自分の手でつくること。これは当たり前のようだが、現代においてレディメイドや発注に頼らず、あくまで手仕事に徹しているのは珍しい。いわばアーティストであると同時にアルチザンでもあるのだ。だからこそ広い制作スペースと、設備や道具を共有できる共同スタジオを必要としたのだ。
  また、彼らはライバル同士であるにもかかわらず、情報を共有したり相互協力を惜しまない。たとえば、あるメンバーに会いに来たキュレーターや評論家を他メンバーにも紹介するといったことが不文律になっている。一種の運命共同体ともいえる。これは、彼らが今のところスタート直後のほぼ横並びの状態だから可能なのだろう。この中からひとりふたり飛び出していけば共同体は崩壊するかもしれない。

緊急課題

今、この共同体に危機が訪れている。この土地が買収されて再開発が決まり、10月末までにここを明け渡さなければならなくなったからだ。今はこの危機感が彼らの結束を強めているが、最悪の場合バラバラになり、スタジオ食堂が「青春の1ページ」に終わりかねない。だれか、8人のアーティストがスタジオとして使える広いスペースを安く貸してくれないだろうか?

[むらた まこと/美術ジャーナリスト]

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