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映像を含めた現代芸術の総点検 ドクメンタ10の写真展示について |
宮本隆司 | |||||
6月21日より開催されているカッセルのドクメンタ10の評判は、あまりかんばしくないようである。ドイツの新聞では“美術鑑賞の快楽を奪い去ってしまった展覧会”であるとか、“糞づまりの美術展”などと酷評されていた。たしかに理屈っぽい作品が多く、言葉が介在するビデオ作品などは見るのに時間がかかる上、一瞬のうちに感受できる明快な作品が見あたらない美術展であった。そのためか、オランジェリーの前庭に建てられた、カールステン・ホラーとローズマリー・トロッケルの「ブタと人間のための小屋」などは、ブタの親子が走りまわるのをただ眺めるだけというバカバカしいものなのだが、何故かほっとして、つい眺め続ける事になってしまうのだった。 しかし、芸術監督カトリーヌ・ダビッドの、現代美術の総体を改めて問い直すのだという強い意志も、まあ理解できないこともない。映像の世紀としての20世紀末の現代ということで、写真家が多数参加しているのも、今回のドクメンタの大きな特長であった。ウォーカー・エバンズ、エルスケン、ロバート・アダムスといった写真家達の60年も昔の作品があるかと思えば、ジェフ・ウォールなどの現代作家までが所狭しと並べられていて、いったい何故この人の作品がここにあるのかと疑問が起こるくらいに、様々な作品がかき集められていた。しかし、一見すると混乱しているのではないかと思われる作品展示も現代写真の系譜や写真だけの展示では発想できない組み合わせであるだけに、映像を含む現代芸術の総点検という企画のユニークさが現われているとも言えるだろう。 ドクメンタ10の性格を象徴していたリヒター メイン会場の大展示室いっぱいに並べられた膨大な数のゲルハルト・リヒターの資料写真の展示は良くも悪くも、このドクメンタ10の性格を象徴していた。リヒターのそれは、写真は現代社会で不可欠のメディアであると同時に、絵画表現成立にも重要な要素である事を証明したかったのだろうか。でも見続けるうちに、こんな舞台裏の手の内を見せられるよりも、やっぱりこれを下地にしてできた作品を見たいと思ったのは私ひとりではないだろう。その点、マッタ・クラークの道路の線を追う写真や、ハンス・ハーケのマンハッタンの建築物を撮って集めた写真などは、作品としてちゃんと自立しているし過去の仕事というだけでない意外性もあって興味深かった。 |
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