最近ようやく、ネットワークを使った作品やウェブサイトの作品を見かけるようになったと思っていたら、今回の国際展でもそのような作品が紹介されていた。そのなかで注目すべきは10数点のウェブサイト作品が出展されていたドクメンタだろう。総合キュレーターのカトリーヌ・ダビッドがSimon Lamuniereにウェブサイトのキュレーションを依頼して今回の企画が実現したという。もちろんドクメンタ史上、初めての試みだ。
作品は「Surfaces & Territories」「Cities & Networks」「Groups & Interpretation」「In & Out」のカテゴリーに分けられて紹介されており、インターネットに接続していれば、世界中のどこからでも作品を見ることができる。ドクメンタ会場(ドクメンタホールの地下1階)には、コンピュータが20台近く配置され、観客が自由に作品を見られるようになっていた。Simon氏によると、ネットワークを通して作品を見ることによって、ウェブサイトにアクセスした人に自分と作品との距離を感じてほしかったという。
出展された作品のうち目を引いたのは、「jodi.org」(by Joan Heemskerk & Dirk Paesmans)http://www.jodi.org/だ(この作品は今年のアルスエレクトロニカのInteractive Art部門で受賞を果たした)。
総ウェブページ数が350にも及ぶという「jodi.org」は94年から制作が開始され、いまなお進化を続けている。ウェブサイトにアクセスしてみると、テキストやグラフィックが自動的にどっと走り出して、なんともいえない不思議な感覚に襲われる。普段、静止したウェブサイトしか見たことのない人はドキッとさせられる作品だ。このような表現こそ、ウェブサイトならではのものだろう。サーバーにアクセスすると、Javaスクリプトで書かれたファイルが読み込まれてプログラムが実行されるので、このような動きのある作品をブラウザーで表示することができるのだ。この作品を見るためには、Javaに対応しているブラウザー(Netscape Navigatorなら3.0以降のバージョン)でShockwave for Directorという動画用のプラグインが必要だ。
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一方、ヴェネツィア・ビエンナーレではまとまったウェブサイト作品はなかったが、カステッロ公園内のオーストリア館とドゥカーレ宮殿内の台湾の展示にネットワークを使った作品があった。
オーストリア館では、50年代の「Wiener Gruppe」の活動をまとめたカタログを積み上げたインスタレーションがあり、その脇に端末が置かれて同グループのウェブサイトを見られるようになっていた。
一方台湾の展示では、参加した5人のアーチストのひとり、JUN-JIEH WANGがウェブサイトを用いた作品を展示していた。これはウェブサイト中に架空の旅行代理店を作り、展示会場の端末で見られるようにしたものである。旅行という、本来自分で体験するリアルな楽しみをバーチャルに見せることで、現代のハイテク・デジタル社会を象徴させている作品だ。
ドクメンタではウェブサイト自体が作品として完結していたのに対して、ヴェネツィアで紹介されたものは従来のインスタレーションの中でウェブサイトを見せるという使い方をしていたのが印象的だった。これらの作品は展示全体のなかのほんの一部であるし、作品としてもまだまだという印象があるが、今後予想を覆すような作品が登場することを願いたい。 |
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ウェブサイトが見られる部屋。
順番待ちをしている人もいて、
なかなかの人気 |
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カステッロ公園のオーストリア館の展示。ここに積んである本は1冊ずつ持ち帰れる |
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本のインスタレーション(オーストリア館)の横に置いてあった端末。Wiener Groupのウェブサイトが見られるようになっていた |
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ドゥカーレ宮殿に貼られた台湾の展示の垂れ幕。サンマルコ広場脇のかなり目立つ所にあった |
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JUN-JIEH WANGの作品。
ビニール製の椰子の木が並ぶ中に置かれた端末を使ってバーチャル旅行を楽しむ |
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