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京都映画祭 過去を殺さぬためには何をすればよいか ――「座談会・時代劇づくりの体験を語る」 |
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篠儀直子 | |||
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懐古するということ
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回顧するということ
では、東映時代劇の「黄金時代」をふりかえることは、その伝統の継承は、現在の「リアルなもの」に対し、なんら力を持ちえぬものなのか。このように問いを立てるとき、舞台上に置かれたテーブルの一方の端、司会や沢島の反対側の端に座っていたひとりの人物のたたずまいが、卓抜な批評性をまといはじめる。その人物、中村嘉葎雄は、名を呼ばれるまで宙を見つめて考えごとをしているかと思えば、他の出演者の発言を絶妙のタイミングでフォローしてオチをつけ、美空ひばりとの思い出を求められると「歌が大好きです。ぼくはひばりさん以外の歌は聴きません。あとはダークダックスですね」とケムにまいたりする。ところが同時に彼は、出演者のなかで現在おそらく最も実働機会の多い人物でもあって、ゆえに、今日の映画製作について最も実際的かつ刺激的な発言を提示する人物でもあったのだ。同一シーンをアングルを替えて何度も撮りなおしたりモニターだけを見て監督が演出したりといった現象を総括して彼は、今の映画作りの現場からは「皮膚感」が失われていると指摘する。この簡潔な一語の喚起するイメージの豊かさ! 沢島の開いた闇の暗さに、唯一抵抗しうるのはこの「皮膚感」に対する感受性ではあるまいか。たとえば、空気を全身で受けとめながら、現場で思考し、行動すること。現場での、出来事の一回性を大切にすること。そのようにふるまうことは、同時に、東映の、あるいは日本映画の、黄金時代の遺産を継承する行為でもあるはずだ。数年前病に倒れこの日出演者として舞台に上がった東千代之介の役者としての再起もぜひ、そうした感受性にささえられた場で実現されてほしいと思うのである。
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「座談会・時代劇づくりの体験を語る」 | |||
会場:祇園会館(京都) 会期:1997年12月7日(日) 出演者:沢島正継、櫻町弘子、東千代之介、中村嘉葎雄、 山内鉄也(司会) 問い合わせ: Tel.075-752-4840 |
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