外見と同じように、大富豪ポール・ゲッティのブルジョア趣味を明快に反映しているのが、建物の内部に置かれた作品群である。とはいえ、欧米の公共の美術館に慣れ親しんでいる者の目から見れば、個人の蒐集品であることには感服しても、コレクションの規模が(少なくとも展示しているものに限れば)大きいと思われることはないし、また有名な画家たちの作品が掛かっていても、彼らの傑作といえるものは数が少ない。ただ、それらの作品の保存状態がよいことと、ゲッティがことに関心をもったいくつかの時代、様式、ジャンルの作品は非常に充実している。たとえば、古代ギリシャ・ローマの彫刻、中世の装飾写本、マニエリスムの絵画、それにロココの家具、調度。とくに、ロココの室内装飾品は、当時の支配階級の生活の場を、時代ごとに細かく分類して部屋部屋に実際に再現してあり、これに匹敵するのは、ルーブル美術館の装飾品のセクションぐらいだろう。
ポール・ゲッティが亡くなってからすでに20年以上が経過した現在、昨年末に開館したゲッティ・センターは、蒐集活動ばかりでなく、今後研究教育を積極的に助成していくそうである。私たち一般の芸術愛好家としては、とにかくゲッティ・センターに行くほかなかろう。ロサンゼルスにまたひとつ、必見のアート・スポットができたことを素直に喜びたい。
The J. Paul Getty Museum
http://www.getty.edu/museum/
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