少女マンガらしい少女マンガは1950年代半ばから始まっている。それまでは、戦前のと同じような抒情画が男性作家によって少女向けの雑誌に掲載されていた。1950年代半ば、少年誌が積極的にマンガを連載し始め、少年向け教養娯楽雑誌から少年マンガ雑誌へ変身をはかるのと軌を一にして、少女雑誌もマンガを積極的に連載するようになった。このころまでは、女性の社会進出が遅れていたことと関係して女性マンガ家の数は多くなく、手塚治虫、横山光輝(よこやまみつてる)らが少女マンガを描いている。手塚の『リボンの騎士』は男装の女性騎士が活躍する物語で、そこには、女性が男役もこなし女性だけを団員とする宝塚(たからづか)歌劇団の影響や戦後の少女たちの解放願望の投影が読み取れる。
1950年代半ばからは、前述の母娘愛情物語、芸能界・社交界物語、恋愛物語(但、当時は淡い恋愛のみを描いた)、またオカルト体験談などを、少女マンガ家が中心になって少女マンガ誌に連載するようになる。以後20年ほどは、女性マンガ家が女性読者のために描く本来の少女マンガの時代であり、男性読者が読めるような作品は事実上なかった。例外が水野英子(みずのひでこ)である。伝説のトキワ荘グループの中の紅一点であった彼女は、ロック歌手を主人公にした『ファイヤー!』など骨太な物語を描き、男性読者をも獲得した。
1970年代半ばにニューウェーブが登場する。当時20代半ばの、萩尾望都(はぎおもと)、竹宮恵子(たけみやけいこ)、大島弓子(おおしまゆみこ)、山岸涼子(やまぎしりょうこ)たちである。彼女たちは生まれた時から戦後マンガを吸収して自己形成してきた世代である。ニューウェーブの作家たちは、SFやファンタジーまた少年たちの同性愛を好んで描いた。少年たちの同性愛は、読者にとって男女の生々しい恋愛よりロマンチックに思え、作家にとっても創意を自由に駆使する余地が多かった。当然ながら、この同性愛も架空の西洋を舞台にしていた。こうした作品は従来の少女マンガの枠を超え、少女らしさの束縛が少ないものであったから、男性の読者もつかんだ。これをきっかけに、女性作家で少年誌・男性誌に執筆する人も出てきた。
1980年代になると、マンガ雑誌の細分化が顕著になり、各出版社は競って新雑誌を創刊した。女性向けのマンガも、それまでは一様に少女マンガでしかなかったものを年長女性用マンガが開拓された。少女マンガでは描けなかった大人の恋や結婚、社会・歴史テーマの作品である。これを和製英語でレディスコミック(Rediss Comic)と言う。共産主義とは何の関係もなく、Ladiesの日本風発音による。1980年代後半には、レディス誌の中から女性向けポルノ誌が何誌も生まれた。それらはB級出版社を版元とするものだったが、穏健なレディス誌をたちまちのうちに駆逐した。内容は、強姦、近親相姦、レズビアン、スカトロジー、屍姦などを含み、保守的なセックス観だけではなく人権や女性解放を唱える進歩的なセックス観をも挑発している。 |
大島弓子 White-Field
http://www2t.biglobe.ne.jp/
~autumn/white.html
絵本・児童文学研究センター報 アポリア2「鶴見俊輔氏との出会い」……河合隼雄
http://www.ogb.otaru.hokkaido.
jp/ej/aporia/aporia2.htm
作家一覧&COMIC LIST
http://www.nerimadors.or.jp
/~jiro/comics/sakka/ |
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