キュレーターズノート
アーティスト・イン・レジデンスと美術館/シャルロット・ペリアン展、準備中
角奈緒子(広島市現代美術館)
2011年09月15日号
学芸員レポート
20世紀が生んだ、建築界の巨匠ル・コルビュジエを知らない人はおそらくいないだろう。では、その建築家とともに家具や内装、住宅設備に画期的な新風を吹き込んだデザイナー、シャルロット・ペリアンの足跡と功績をどれほどの人が知っているだろうか。
ペリアンは、戦争の気運高まる1940年、日本の商工省からの招聘により「輸出工芸指導顧問」として初来日している。海外輸出用の工芸品改良の指導を求められたペリアンは、若き日の柳宗理らとともに全国を訪ね、ヨーロッパのデザインの実状をレクチャーしながら日本の文化を学び、翌年にはその成果を展覧会として紹介した。さらに戦後、再来日をはたしたペリアンは、初来日の際に吸収したものの自身のなかで消化しきれていなかったアイデアを披露すべく、日本の文化からヒントを得て生まれた名作を発表する。それらの家具は現在もよく知られ、人気が高いものばかりである。
2011年10月22日より、神奈川県立近代美術館・鎌倉館でオープンし、その後、広島市現代美術館、目黒区美術館へと巡回する「シャルロット・ペリアンと日本」展では、当時の貴重な資料、書簡、写真を通して、ペリアンの目がとらえていたものを再確認し、彼女と日本とのあいだに生まれた共鳴がいかに作品として結実されたかを考察する。少し懐かしさを感じながらも、いまなお新しさをもち続けるペリアンの家具も必見だ。