キュレーターズノート
高松次郎|鷹野隆大「“写真の写真”と写真」展/高松次郎:コレクション in Hiroshima──点、線、不在のかたち
角奈緒子(広島市現代美術館)
2009年04月01日号
学芸員レポート
当館では年に三度、コレクション展を入れ替え、毎回さまざまなテーマを設定し、コレクションを紹介している。このたびは、いつもと少し趣向を変え、当館の所蔵する高松次郎作品と、広島在住のコレクターの方の所蔵する高松作品をお借りし合体させ、広島にある高松次郎作品を展示している。
当館が所蔵する《影の母子像》では、これまで目にしたことのなかったドローイング8点──おそらく初公開であろう──を展示。これらのドローイングからは、偶然できた影を映しとったように見える影のペインティングが、子を抱く母親の髪の毛のはね具合や影と影との間隔といった細部における微妙な加筆、修正を経て、完成へ至った経緯を知ることができる。また、布や紐の一部分だけに弛みを持たせた、その名も「弛み」シリーズや紙を細かくちぎり、まるで絵のないジグソーパズルのように、ちぎりとってしまった空白にふたたび貼り合わせていった「紙の単体」シリーズなど、何度見ても飽きることのない、しかも時に笑いを誘発するような作品が並ぶ。文字を使いながらも、物語を一切持たない《The Story》ほか、目にする機会の少ない立体作品なども紹介。鑑賞者に間断なく疑問符を突きつける高松次郎ワールド、困惑という仕方で堪能してみてはいかがだろうか。
コレクション展3 高松次郎:コレクション in Hiroshima──点、線、不在のかたち
会場:広島市現代美術館
広島市南区比治山公園1-1/Tel.082-264-1121
会期:2009年2月14日(土)〜5月24日(日)