2020年02月15日号
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キュレーターズノート

フォロースルー──金沢アートプラットホーム2008展

鷲田めるろ(金沢21世紀美術館)

2009年05月01日号

かつて『朝日新聞』に「フォロースルー」というコーナーがあった。話題になった事件が、その後どうなったかを報道する欄であった。事件には続報があるはずで、その全体を知らなければ判断は下せない。過熱しては、すぐに忘れ去る日本のメディアにあって好感がもて、愛読していた。  美術展もまた、一時のイベントとして忘れ去られてしまいがちである。展覧会に関する報道は、展覧会の終了とともに終わってしまう。しかし、これはある意味当然で、なぜなら美術展には会期があり、イベントとして完結する形式のものだからである。展覧会を体験したことが個人の内になんらかの影響を残しうるとしても、それを評価することは難しい。  ところが、昨年、金沢21世紀美術館が主催して19人のアーティストが参加した展覧会「金沢アートプラットホーム2008」の内のいくつかのプロジェクトは、街に継続的な活動を残すことを目指していた。だとすれば、展覧会が終了して4カ月経つ現在、それがどのような展開を見せているかを検証することは、通常の展覧会とは異なり、続報に位置づけられるだろう。

 KOSUGE1-16は、「金沢アートプラットホーム」で、300人以上の会員を持つ地域のサッカークラブ「FC.TON」と協働し、巨大サッカーボードゲーム《AC-21》のプロジェクトを行なった。FC.TONの子どもと大人が参加し、高さ約60センチのプラスチック製プレーヤー人形に、絵の具を使って思い思いのユニフォームを描いた。一方のチームは、「未来のFC.TONのユニフォーム」、もう一方は「未来のFC.まるびぃのユニフォーム(「まるびぃ」は金沢21世紀美術館の愛称)」という想定だった。そして、スタジアムの組立ても一緒に行なった。さらに展覧会会期中、16チームが参加して、《AC-21》によるトーナメント戦「AC-21カップ」を行なった。このとき、FC.TONは、チームとして参加するほか、運営側として審判なども行なった。
 展覧会終了後の今年1月、金沢での全国フットボールカンファレンス開催に合わせて、金沢21世紀美術館でもテーブルトーク「タッグパートナーとしてのスポーツとアート」を行なった。FC.TONのクラブマネージャー辰巳義和氏、KOSUGE1-16の土谷享氏、東京のフットボールリーグ「DUOリーグ」のチェアマン中塚義実氏、クツ創家の佐藤いちろう氏をゲストに迎え、金沢でのKOSUGE1-16とFC.TONの協働、東京でのKOSUGE1-16と佐藤いちろう氏、DUOリーグの協働について報告してもらった。DUOリーグでは、靴磨き講座や、使い古したサッカーシューズを使ってトロフィーをつくるプロジェクトが行なわれていた。その後、この活動は総称して「Skin Project」となった。このテーブルトークがきっかけとなり、「Skin Project」を金沢でも行ないたいという話に発展した。
 辰巳氏は、持ち前の行動力で、自ら東京のKOSUGE1-16のアトリエを訪ね、打合せを行なった。そして4月、FC.TONが主催して、佐藤いちろう氏とKOSUGE1-16を招聘し、靴磨き講座とサンダル作りワークショップを行なった。小学校を借りて行なわれたプログラムでは、中学生、高校生を中心とするFC.TONのメンバーが履き古したスパイクを持ち寄り、佐藤氏の指導によって靴磨きを行なった。磨いたスパイクを「Skin Project」に提供する場合は、200円の受講料が無料になった。「Skin Project」は、履き古したスパイクを解体し、サンダルとして再生する作品も展開している。この日は、「Skin Project」の用意したパーツを組み合わせてサンダルをつくるワークショップが行なわれた。アッパーの一部に革の紐を縫い付け、それをソールに取り付ける。それぞれが自分の足に合わせたサンダルをつくり、持ち帰った。参加者の満足度も高く、辰巳氏は毎年続けたいという意欲を見せている。


靴磨き講座とサンダル作りワークショップ
写真提供=FC.TON

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