2019年06月15日号
次回7月1日更新予定

キュレーターズノート

コレクション/コネクション──福岡市美術館の30年

山口洋三(福岡市美術館)

2009年08月15日号

 1979年に開館した福岡市美術館は今年開館30周年を迎えた。福岡市制120周年とも重なり、町をあげて賑やかに……といきたいが、市の記念事業はお寒い限りで、20年前の市制100周年とは雲泥の差がある状況だ。

 貧すれば鈍す、というやつで、金はない、だから余計な仕事はしない、すれば損、という雰囲気が福岡のみならず日本国中を覆っているような気がする。それもこれも、新自由主義的価値観がこの10年ですっかり浸透してしまい、効率的に結果(数字)を出せないものは悪という図式からなかなか抜け出せない人が多くなってしまったからである。指定管理者制度はその最たるものだろうが、そうでなくても、観覧者数や収益という経済的価値観に頭を押さえられ、自由な企画や活動にまで手が回らなくなってしまった学芸員の方々は数多くいらっしゃることだろう。恐ろしいのは、そうした考え方がいつの間にかデフォルトになってしまうことである。芸術的価値観より経済的価値観を優先することを当然と思うようになったら学芸員は(そして彼/彼女が属する美術館も)終わりである。
 ……と偉そうに言ってみても、予算以上の大金をざぶざぶ使うわけにもいかないのは世の理で、ようするに心意気の問題である。今回30周年記念展覧会のひとつとして企画した「コレクション/コネクション──福岡市美術館の30年」は、当館始まって以来の大規模所蔵品展で、古美術から近現代美術までの総数約14,000点のなかから選りすぐりの作品を展示した。しかし単なる名品展では芸がないので、古美術・近現代美術それぞれの特色を引き出したこれまでの常設展示の手法を踏襲しつつ、ジャンルや時代を超えたテーマ別の展示も取り入れ、古今東西の美術作品が互いに同居するコーナーも設けた。近現代美術担当と古美術担当が互いにテーマ毎に知恵を絞り、作品を選択した。もちろん、あまりマニアックになってもいけないので、名品展的な要素、つまり当館代表作品としてぜひ展示したい、展示すべき作品もそこに織り交ぜていった。その結果、通常の1,2階常設展示室から特別展示室Aにまで広がった展示スペースのなかに、約400点もの作品がひしめく結果となった。こちらは写真を見ていただければ細かな説明は不要だろう。


「多才な美術家たち」のコーナー。宮本武蔵の作品を中心に、草間彌生、ウォーホル、大竹伸朗の作品。同じコーナーにダリやホックニーもある。


「日常と美術/いくさと表現」から。アンドレアス・グルスキー《株主総会》の目前に古美術の日本刀や鞍の展示。グローバル経済が新たな火だねを用意する?


リサ・ミルロイ《壷》とギリシャ時代のアンフォラを並べた。当館ならではの、古美術と現代美術の共演


戸谷成雄と阿部守の作品。普段は物置としている倉庫も臨時の展示空間


「内なる世界」のコーナー。当館の代表的所蔵品のひとつ、ミロの絵画の隣に、木下晋のドローイング

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