キュレーターズノート

コレクション/コネクション──福岡市美術館の30年

山口洋三(福岡市美術館)

2009年08月15日号

外部組織とのコネクション

 所蔵品展題名に「コネクション」の単語があるのは、単なるダジャレではない。この展覧会にはさまざまなコネクション(つながり)をつくった。そのひとつが、福岡市文化芸術振興財団(以下、財団)とのコラボレーションである。
 財団は当館ほか市博物館アジア美術館とも関係の深い外郭団体だが、単独事業としては、美術ではなく、演劇や音楽などパフォーミングアーツに属する事業を展開してきた。現場は嘱託職員が主体で、数年で職員が入れ替わるため、いまひとつ協力体制を組みにくい。今回は財団設立10周年ということもあり、財団事業を、美術館を会場として行なうこととなった。野村誠が所蔵作品を音符に見立てたワークショップを行なうほか、舞踏家の松岡涼子が中西信洋作品の前で舞踏を行なう。そして、岩下徹とゼルプスト(地元のダンス集団)も予定されている。
 もうひとつは、地元で人気の高い劇団ギンギラ太陽'sの、当館30周年記念提携公演である。演目は、「翼をくださいっ!外伝『幻の翼 震電』」。3年前に開催された中ハシ克シゲの「震電プロジェクト」から派生した作品である。そしてオフィスゴンチャロフ企画の「震電プロジェクト」ドキュメント展も演劇と会期をぴたりとあわせて市民ギャラリーで開催した。
 演劇の本格的な上演は当館ではじつはこれまであまりなかった。あまり演劇向きともいえない狭いステージなのだが、劇団は縦横に空間を使って演じていた。

 文化庁事業に財団に劇団、さらに地元関係の作家の協力のもとで、「コレクション/コネクション」は開催されている。事業主体がいくつも交錯しているので交通整理がたいへんだが、これぞコレクションをコアにしたコネクションの生成ではないかな? いつもと違う所蔵作品、いつもと違う美術館は、来場者にどううつるだろうか? 関連イベントの結果は次回にレポートしたいと思う。


講堂でのギンギラ太陽'sの開演前のシーン。東京進出も果たした福岡の人気劇団


「震電プロジェクト」ドキュメント展(市民ギャラリー)から。ギンギラの演劇とも連動

コレクション/コネクション──福岡市美術館の30年

会場:福岡市美術館
福岡市中央区大濠公園 1-6/Tel.092-714-6051
会期:2009年8月8日(土)〜9月27日(日)