2019年10月01日号
次回10月15日更新予定

トピックス

第25回ICOM(国際博物館会議)京都大会2019 開催

artscape編集部

2019年09月15日号

9月1日〜7日まで、第25回ICOM(International Council of Museums:国際博物館会議)京都大会2019が国立京都国際会館で開催された。ICOMは1946年にミュージアムの進歩発展を目的に創設された、世界で最大唯一の国際的非政府機関。現在、138の国と地域、3,009の博物館、44,500人の専門家が参加している。artscapeでは、3回にわたって本大会をリポートする。(artscape編集部)


会場風景 [写真提供:ICOM京都大会組織委員会]


ICOMの大会は3年に一度開催され、本大会はアジアでは3回目(2004年にソウル、2010年に上海)、日本では初めて。今回、過去最多の120の国と地域から4,590名が参加した。期間中、基調講演、パネルディスカッションなどの全体会議のほか、30の専門分野にわかれた国際委員会のセッションや、オフサイトミーティング、二条城や能・狂言などの見学ツアー、京都のみならず関西周辺の博物館美術館や文化遺産へのエクスカーションなど、数多くのイベントが開催された。また、期間中に、関連して二条城や清水寺で現代美術の展覧会も催された★1

持続可能な社会に向けてのミュージアムの新しい役割


本大会のテーマは「文化をつなぐミュージアム──伝統を未来へ──」。世界規模で起きている気候変動とそれに伴う自然災害、紛争、格差社会、環境問題、人権問題など、社会と環境の大きな変化のなかで、ミュージアムはどう貢献できるのか。ミュージアムが地域のなかで、あるいはグローバルなつながりのなかで継承する有形無形の文化遺産をどう未来に引き継ぐのか、という恒久的なミッションに加え、持続可能な社会を作っていくための新しい積極的な役割を見出し、共有していく時期にきていることを暗示している。それらについて、社会的にも、経済的にも、政治的にも、文化的にも背景を異にするさまざまなミュージアム関係者が議論する場となった。

このテーマを象徴する基調講演として、2日には世界各地の美術館博物館、また新国立競技場の設計も手がけた建築家の隈研吾、3日にはブラジル出身で国際的に活躍する報道写真家であるセバスチャン・サルガド、4日には中国出身で現在ニューヨークを拠点にし、日本でも多くの展覧会を開催している現代美術家の蔡國強がスピーチをした。



セバスチャン・サルガドによる基調講演(9月3日) [写真提供:ICOM京都大会組織委員会]


プレナリー・セッションとしては、以下の4つのセッションが用意された。
まず、ICOMの持続可能性ワーキンググループのメンバーを中心とした登壇者による「博物館による持続可能な未来の共創」。そして、「ICOM博物館定義の再考」では、欧米・アフリカ・アジアからの博物館館長や専門家による、7月に発表された「博物館の再定義案」についてのセッション。「博物館の再定義」は、本大会最終日の臨時総会で投票を予定しており、この日の午後も3時間におよぶ白熱したディスカッションが行なわれている。(次号で詳しいリポートを掲載する予定)また、世界各地で起こる災害に対し、文化遺産を守る博物館の対応について意見交換する「被災時の博物館──文化遺産の保存に向けた備えと効果的な対応」。アジア諸国のミュージアムが増えていくなか、当然ICOMのアジア地域の会員数も延びている。最後に、アジア美術を扱う博物館特有の課題や連携をとりあげる「世界のアジア美術とミュージアム」のセッションが行なわれた。

これ以外にもパネルディスカッション「デコロナイゼーションと返還:より全体論的な視点と関係性アプローチへの移行」、ワークショップ「スマートなデジタルコミュニケーションのために:コミュニケーションデザインとパートナーシップの構築・運用」、各委員会のセッション「博物館教育におけるリサーチ・クエスチョンの多様性」「コミュニティとの協働によるコレクションのドキュメンテーション」「不在の存在:記憶の空間で喪失を喚起する無」「ブラジル、リオデジャネイロ連邦大学 国立博物館の火災後の救出活動:報告と教訓」「メディアによるインクルージョン強化のための障壁削減」など、多種多様なテーマについてディスカッションが繰り広げられた。

また、メイン会場以外の会場でも30の委員会が視察や会議が開催されている。(ICOM京都大会にあわせて開催された日米文化教育交流会議[CULCON:カルコン]の美術対話委員会シンポジウム「日本美術における国際交流──課題と可能性」について、10月15日号でリポートを掲載する予定)



ワークショップ「博物館定義の再考ラウンドテーブル1」の会場風景(9月3日)

ミュージアム・フェア──世界の先鋭的ミュージアムと最新の展示保存技術


国際会議場の会議室でさまざまな討論が行なわれるかたわら、3つのホールで、世界のミュージアムや展示保存に関連する企業や団体が出展するミュージアム・フェアが行なわれていた。



ミュージアム・フェアの会場風景

目をひいたのは8Kコンテンツビューアーのデモを行なっていたNHKエデュケーショナル、来年1月にアーティゾン美術館(旧ブリジストン美術館)がオープンする石橋財団、展示ブースが圧倒的な存在感を示していた大塚国際美術館、世界文化遺産の醍醐寺(ICOMの開会式は醍醐寺の僧侶たちの声明からスタートした)、ARとVRを駆使したインスタレーションを展開していた台湾の故宮博物館など。



ミュージアム・フェアの会場風景(左:石橋財団 右:大塚国際美術館)

ミュージアムや展示物にかかわる企業だけではく、「大津波被災文化財保存修復技術連携プロジェクト」や公益財団法人京都古文化保存協会、一般社団法人国宝修理装潢師連盟など、自然災害にあってダメージを受けた展示物や国宝級の文化遺産の保存修復に関する団体も参加していた。


大日本印刷は「DNP initiative for Art and Culture」をテーマに、世界の博物館美術館、文化財所蔵機関との共同開発プログラムをデモンストレーションを交えて展示。林原美術館所蔵の重要文化財「洛中洛外図屏風 池田本(左隻)」の高精細複製画「伝承美」の展示、国宝仁和寺金堂内部の3D計測等による高精細VRのデモ★2など、具体的なプロジェクトの一部の体験をとおして、先端技術を用いた展示の展開例を提案した。

また、DNP ミュージアムラボがフランス国立博物館(Bibliothèque nationale de France:BnF)と共同で行なっているBnF所蔵の地球儀・天球儀の3Dデジタル化のプロジェクトを映像を交えて展示。フィンランド国立アテネウム美術館との共同研究プロジェクト「シニア向け美術館賞ワークショップ」や東京富士美術館や国立国際美術館で開催中の「ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道」での3D高精細デジタルデータ化とVR技術による展示物開発のプロジェクトもパネルや映像で紹介した。



大日本印刷の出展風景
左:国宝仁和寺金堂の高精細VRのデモと林原美術館所蔵「洛中洛外図屏風 池田本(左隻)」の高精細複製画「伝承美」
右:地球儀・天球儀の3Dデジタル化のプロジェクト


★1──「CONTACT つなぐ・むすぶ 日本と世界のアート展」(9月1日〜8日、清水寺、総合ディレクター:原田マハ、出品作家:司馬江漢/アンリ・マティス/オーブリー・ビアズリー/アルベルト・ジャコメッティ/猪熊弦一郎/棟方志功/東山魁夷/ヨーゼフ・ボイス/ゲルハルト・リヒター/三島喜美代/森村泰昌/三嶋りつ惠/ミヒャエル・ボレマンス/加藤泉/荒木悠/宮沢賢治/川端康成/小津安二郎/黒澤明/手塚治虫/竹宮恵子/バード・リーチ/河井寛次郎/濱田庄司/ルーシー・リー/シャルロット・ぺリアンほか)
「時を超える:美の基準 Throughout Time: The Sense of Beauty」(8月31日〜9月3日、二条城、総合プロデューサー:井上智治(一般財団法人カルチャー・ヴィジョン・ジャパン)、アドバイザー:南條史生/名和晃平、出品作家:青木美歌/小林且典/須田悦弘/チームラボ/名和晃平/西川勝人/ミヤケマイ/宮永愛子/向山喜章ほか)
★2──https://www.dnp.co.jp/news/detail/1192808_1587.html

第25回ICOM(国際博物館会議)京都大会2019

会期:2019年9月1日(日)〜9月7日(土)
メイン会場:国立京都国際会館
京都市左京区岩倉大鷺町422番地

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