アート・アーカイブ探求
狩野元信《四季花鳥図》和漢兼帯の型──「山本英男」
影山幸一
2011年09月15日号
絵画のしくみ
歩いて数分の所に道場があるからというのが主な理由だが、最近弓道を始めた。子どもの頃は剣道もやっていたので、型にはまった武道好きであることに改めて気づかされるが、短絡的思考を自認しつつも先端的な現代美術好きには、体をつかって脳が汗をかいているような非日常的な感覚があり、まだやめずに続けている。
3.11の災害から、放射能汚染が日常の見えない不安を増幅させて半年が過ぎる。安定とは程遠い日本列島をまた大きな台風12号がざっくりと爪痕を残していった。未曾有の災害の連鎖に、美しく見える富士山も1707年に爆裂している史実を思い出している。世界を震撼させた9.11からはや10年。Changeをフレーズに登場したオバマ大統領のアメリカも、理想と現実に夢を失いかけているようだ。
日本も世界も何が変わって、何が変わらないか。持続可能なシステムを創造することはできるのかどうか。「残されてきているもの」に前へ進むためのヒントがあるのかもしれない。日本の美術史上350年以上続いた家系であり、画系という絵画のしくみをつくったのが狩野派である。その源流の作品にたどり着きたいと思った。
狩野派の祖・狩野正信のあとを継いだ狩野元信の《四季花鳥図》(大徳寺大仙院蔵)がある。室町時代に描かれた自然風景の水墨画で、凛とした画風でありながら、よく見ると松の木に止まっている鳥の足元に虫がいる。大胆かつ繊細で楽しさとのバランスがよく調和し、絵画の手本に思えた。この絵について京都国立博物館の美術室長で『日本の美術 初期狩野派──正信・元信』を編集した山本英男氏(以下、山本氏)に見方を伺ってみたいと思った。山本氏は1996年京都国立博物館で開催された『特別展覧会 室町時代の狩野派 ─画壇制覇への道─』の図録巻頭にも執筆しており、その表紙には《四季花鳥図》が大胆かつ繊細に飾られていた。残暑が厳しい8月末日、京都国立博物館に山本氏を訪ねた。