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Dialogue Tour 2010

第7回:MACとhanareと保育所設立運動@Social Kitchen[プレゼンテーション]

会田大也/須川咲子2011年04月01日号

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プレゼンテーションディスカッションレビュー開催概要

 ツアー第七回は京都のSocial Kitchenにて、山口からMaemachi Art Center(MAC)の会田大也氏を招き、MACのきっかけとこれまでの変遷について、過去のプロジェクトを通じてうかがった。さらに特別ゲストとして、1960年代に共同保育所として自宅を開放して保育園設立運動をはじめた坂東昌子氏に当時の様子をお話いただいた。ホストはhanareの須川咲子氏が務め、プレゼンテーションとディスカッションにより、それぞれの活動の意義と今後の活動のヒントを探った。

山口のアートシーンとMAC

会田大也──今日は僕が住んでいる「Maemachi Art Center(MAC)」についてお話ししますが、まずはじめに山口と美術の関わりについてトピックだけ紹介したいと思います。
 1980年代に、「ギャラリーシマダ」というギャラリーが嶋田日出夫夫妻によって山口にオープンしまして、のちに東京にも開設されるのですが(その後、2003年閉廊)、ここでは河原温などの現代美術家の作品を取り扱っていました。それから「山口県立美術館」がありました。1979年に開館した美術館です。1990年にはダン・グレアムという世界的に有名な現代美術作家が招聘されていたり、地方都市のわりには現代美術に接する機会が多かったといえます。音楽に関しても、1989年から98年にかけて、「秋吉台国際20世紀音楽セミナー&フェスティバル」が開催されました。現代音楽のイベントです。いま活躍している伊藤弘之や川島素晴といった現代音楽家らが若いころに、ここでセミナーを受けていたようです。98年になると、80年代を通じて活動していた「山口現代芸術研究会」から発展し、NPO化した「山口現代藝術研究所(YICA)」ができました。YICAは先に紹介した嶋田さんと、山口大学の奥津聖先生(美学・哲学)などが中心となって現代芸術を紹介する場として活動が続いています。
 こうした背景があって、98年には「秋吉台国際芸術村」という県立の施設が立ち上がりました。ここはアーティストが滞在制作を行なうレジデンス施設です。磯崎新さん設計による施設で、ユニークなコンサートホールも併設されていて、さきほど話した音楽セミナーなどが開催されることも視野に入れてつくられています。そして2003年にいま僕が勤めている山口情報芸術センター(YCAM)ができました。ここではメディアアートというコンピュータや情報機器などを使った芸術を扱っています。図書館や劇場、映画館などがセットになった複合文化施設です。僕はこのYCAMが立ち上がるときに、教育普及のスタッフとして就職して山口に移り住みました。2003年のことです。
 それから数年経って、2006年に秋吉台国際芸術村のスタッフとして服部浩之くんが山口にきました。その服部くんと、いまは現代美術家として活躍している山城大督くん、当時YCAMスタッフだった小嶋千賀さんの三人でのシェアハウス生活が始まったのが2007年。それがいま僕が住んでいる一軒家です。僕はこの当時は別の場所に住んでいましたが、このシェアハウスでは、友人同士の飲み会からはじまり、職場で出会うアーティストを呼ぶようになりました。秋吉台国際芸術村は、国内外からアーティストを招へいして滞在制作を行なう場所です。YCAMも国内外問わずアーティストが来るので、「うちで飲み会やるからおいでよ」「いままでの作品の経歴を見せてよ」と声をかけて、自然なかたちでアーティストトークらしきものが始まりました。その頃はまだMaemachi Art Centerという名称は使われていなかったと思います。
 YICAとの協働企画として、2007年の中崎透くんの滞在制作&発表や、2008年の有佐祐樹くんの滞在制作&発表など、オルタナティブなアート活動が続いてきていました。2008年に小嶋さんが転職のために山口を去り、その後、山城くんが復学のために引っ越して部屋が空いたので、2009年に僕が入居します。それまでは自腹の企画が多かったのですが、地元の人たち向けに公募している文化活動の助成金があったので、僕らも市民としてエントリーしてみたところ、満額には至りませんでしたが、半額くらいは助成してもらえることになりました。そういうことになったので、本格的なアートプロジェクトを自分たちが主催者となってやることにしました。2009年7月〜8月に、下道基行くんというアーティストと一緒にやった「Re-Fort PROJECT Vol.5」というプロジェクトです。「Re-Fort PROJECT」は、戦争遺構の砲台跡などの現場に赴き、遊ぶというプロジェクトです。〈Fort〉というのは砲台という意味ですが、それに〈Re〉をつけて、「Re-Fort=再び砲台を使ってみる」というコンセプトで、下道くんと中崎くんが続けているプロジェクトの第5回目を、山口で実施しました。このときは、2009年の7月22日、アジア一帯で観測される日食の日中に打ち上げ花火は見えるのかということを試した壮大な遊びです。後日、MACでも展示をして、たくさんのモニターやスクリーンでイベント当日の様子を見せました。このプロジェクトは助成金を受けてやっているので、自主事業としては初めて行なったプロジェクトでした。
 これが、Maemachi Art Center(MAC)です[図1]。ここの町名が〈前町〉なのでMaemachi Art Center(MAC)という名前です。


1── Maemachi Art Center(MAC)、外観

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  • Dialogue Tour 2010とは

会田大也

1976年生まれ。ミュージアムエデュケーター。東京造形大学、IAMAS(情報科学芸術大学院大学)卒業。2003年より、山口情報芸術センター[...

須川咲子

1978年生まれ。hanareディレクター/ウェイトレス。ニューヨーク市立大学卒業。大学在学中から、フリーで写真展や、「Open Unive...

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